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寄付やボランティアとメディア

/第7回共同リサーチ:チャリティーとは~寄付やボランティア行為を『ジブンゴト』に Vol.5

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むらいゆか ポートランド&シアトル アメリカ西海岸
day
2011-02-02
 

 前回のレポートでも触れたように、ボランティア先を選ぶときに最も信頼できる情報元として、回答者の半数以上が「参加者の声」を選択しました。

“くちコミメディア”の影響力

 最近では、ブログやツイッターやFacebooKを利用して、チャリティー団体やボランティア団体についての口(くち)コミ情報を広げる人を多く見かけるようになりました。このように、情報を受け取る側だけでなく、発信する側に立つことによって、チャリティー行為を、社会問題を「ジブンゴト」として捉えるきっかけにできるかもしれません。

 さらに、このような“くちコミメディア”を利用した、チャリティー団体のキャンペーンも増えています。

 第2章で紹介した世界的自然保護団体である「ネイチャー・コンサーバンシー」のオフィシャル・ツイッターページ上では環境保護についての情報発信を始め、寄付者のコメントを含めたYouTube動画付きツイート、ホリデーシーズン中には環境に優しいギフトのオプション提供など、幅広い内容のツイートを投稿しています。ホリデーシーズンのグリーンギフトを呼びかけるツイートは、投稿されてから4時間のうちに14人のユーザーが「リツイート」して口コミ情報を広めていました。
 
 現在世界最大の会員数を誇るソーシャルネットワーキングサイト、フェースブックではユーザーがシェア機能を使用して口コミ情報を広めることができます。例えば、レアリゼの記事「世界の子どもたちを救うために、コカ・コーラに話してみよう」(ページ下のリンク参照)で紹介されたColaLifeは、Facebookのグループを通してのつながりが、キャンペーンの認知度を上げるのに重要な役割を果たしました。

Facebook:パームオイルをジブンゴトへ!(下部リンク参照)


メディアの報道のチャリティー活動への影響

 テレビでは、震災が起きると被災地や支援団体への寄付を呼びかける報道やコマーシャルが連日流れますが、果たしてこれらの報道は寄付やボランティア活動をしようとする人々にどのような影響を与えているのでしょうか?

 質問6.3「メディアの報道のあり方(例えば、過熱報道やチャリティー団体のコマーシャルなど)が、寄付やボランティア活動をしない理由の一つになっていると思いますか?」という質問に対して回答した49人のうち、「はい」は15人、「いいえ」も15人、「分らない」と回答した人が19人という結果となりました。

 この質問に回答した日本からの回答者30人のうち、「はい」は7人、「いいえ」は全体の約半数の13人、そして「わからない」と回答した人が10人という結果となりました。

 やや分かりにくい質問でしたが、解釈し難い回答結果です。回答者は、「メディアは人々を寄附やボランティア活動に誘うために一定の役割を果たしているが、十分ではない」と考えている、と理解できるかもしれません。

社会貢献を活性化するメディアのあり方とは?

 質問6.4「どのようなメディアの報道内容やメディアのあり方が、寄付・ボランティアを含めた社会貢献活動を活性化させると思いますか?」に対しては、次のような回答が寄せられました。

●「(略)継続的な関わりについては、メディアが継続的に、わかりやすく成果を伝えることが重要と思います。寄付にしてもボランティアにしても、自らの経済的・社会的活動がワンクッション以上介して成果となっている場合がほとんどですので、このブラックボックスを明らかにしていくことがメディアの本来的な役割でもあり、社会貢献活動の活性化のために必須のものと思います。 寄付をしたくないという理由の多くはブラックボックス部分が不透明であったり、想定した以上の中間コストがかかっていることに疑問を持った場合ではないでしょうか。」(千葉県)

●「メディアの仕事かどうか分らないが、寄付の使われ方、職員の待遇などに関する情報がもっと出てくると良いと思う。 メディアがやるべき仕事としては、NGOなどの活動を取り扱う時間を増やすことが必要だと思う。社会の問題を解決するアクターの一つとして、積極的に取り扱うべき。今は政府関連の情報が多すぎる。」(東京都)

●「活動の実体の分かりやすい紹介。どのような寄付やボランティアが存在するのか、それらを総括的に、かつ分かりやすく紹介し ている、信頼できるサイトがあれば、もっと気軽にボランティア等が行えるように思う。特に日本では、ボランティアの受け皿の整備が整っておらず、情報を知らないがために参加できないでいる人も多いのではないか。」(カナダ)

●「現在もやはり一番影響が大きいのはTVだと思われる、あまりTVを見ないので、よく分からないが、途上国への寄付の呼びかける番組で、とりあえず学校を作っておけばよいかのような作りだという印象を受けたことがある。
 寄付を活性化させるかどうかは分からないが、ある地域の社会問題の背景を伝え、寄付を受けて活動する団体とは独立した専門家の目から、寄付の必要性を含めて議論するようなメディアがあるとよい。」(東京都)

 Vol.3で報告したように、多くの人は、社会貢献団体の集めた寄附金の使い方や、プロジェクトの効率、あるいは成果などが不透明だと感じているようです。Vol.3では、団体が積極的に寄付者とコミュニケーションを図ることを回答者は求めていました。ここでは同様の観点から、メディアが社会貢献団体の“ブラックボックス”を明らかにすることを求めています。

 さらに、この“ブラックボックス”は、寄附金の用途や効率に限ったことではないようです。社会貢献活動を単純に美談にしてしまうのではなく、そのネガティブな側面や社会背景などに関しても伝えるべきだという意見も多くありました。

●「寄付やボランティアを必要としている理由を複眼的に伝えること。つまり、悲惨な場面だけをクローズアップしたりするのではなく、その問題が生まれた背景など を丁寧に描き出すこと。そしてまた、その活動にどんな期待があるのか、どんな課題があるのかを分かりやすく伝えること。また、その過程においてメディアの 中立性の追求が欠かせない。と同時に、メディア側の理念や思想をはっきりと持つべきである。」(日本)

●「プラス面だけではなく、マイナス面もバランスよく報道し、それらの情報を基に、私たち自身が判断できるようにすること。」(東京都)

●「一方向からの視点でないこと。 一方的な賛辞でないこと。 メディア自体が変わること。」(日本)

●「よいことばかりではなく、実際にぶつかっている困難などを知ることができるもの。」(オーストラリア)

●「美談に仕上げないこと、ありのままを伝えること。」(レバノン)

●「社会貢献活動の活性化のためには、その活動のリアリティを伝える必要があると思う。いい部分だけ見せても、リアリティがない。いい部分も悪い部分も含めて、寄付やボランティアをした人が『自分の存在意義がある』と思ったことを伝えるような、そういう報道が必要だと思う。」(ルワンダ共和国)

 一方で、報道の内容よりも、社会貢献活動について、視聴者に参加の「きっかけ」を与えることが重要だとする意見もありました。団体の活動内容の詳細を伝えるよりも、むしろその存在を伝えることが先決ということかもしれません。

●「マスメディアについては特にきっかけとしての役割が重要です。実際に社会問題などを『新聞で見た』『テレビで見た』ことをきっかけとして寄付やボランティアに発展するケースが多いと思います。」(千葉県)

●「寄付先や団体を、毎日のようにただ数多く紹介する。ホームページや連絡先を知らせてくれれば、団体の善し悪しは市民が自分で判断すると思うので、とにかく団体名と簡単な活動内容をたくさん紹介するだけでよい。」(東京都)

●「(略)ボランティアについては、その楽しさを伝えるような報道がされるとよいのではないか。」(東京都)

 その他にも、次のように「そもそもメディアは信用できない」という意見や、「メディアではなく、活動者自身や個人個人が自分なりに考える必要がある」という意見もありました。

●「広告(スポンサー)の記事への影響を正直に発表できる信頼できるメディア(政治的偏りのない新聞社やTV制作会社)(略)が出来るとかなり違うと思う。今は個人的に信頼できるNGO/NPOなどを通じてしか信頼できない。」(東京都)

●「メディアでなく、活動者自身の活動がどうあるべきかでしょう。」(英国)

●「いい意味でも悪い意味でもメディアの影響力は多大です。メディアの報道のあり方に疑問を持つこともありますが、それだけで はなく私たち視聴者がメディアからの情報を鵜呑みにしすぎている部分は多くあるのではないかと思います。私たちも正しい情報を見抜くことができるように日 頃からたくさんのものに関心を抱いて疑問を持ちそのことについての自分なりの意見を考える必要があると思います。」(英国)

 米国の回答者からは、ハイチ大震災やハリケーン・カトリーナの被災地支援の為に米国の著名人や歌手などが集まって行うコンサートやコラボレーション企画としてCMを流すなどといった取り組みを紹介した回答がありました。
 日本でも日本テレビによるチャリティー番組「24時間テレビ」がありますが、このような有名人をチャリティー企画に起用する方法は、特に米国では一般市民の意識を高める上で、効果的な方法だと認識されるようになりました。

 最近では12月1日の世界エイズデーのチャリティー活動では、SNSを使う米国著名人や歌手らが同チャリティーの為に、総募金額が100万ドルに達するまでSNS活動を休止する、という新たな試みが話題になりました。

まとめ

 今回の第7回共同リサーチでは世界各国の回答者からの意見を基に、寄付とボランティア活動に関する意識やメディアの影響について考えてみました。

 2004年のインド洋津波から立て続けに自然災害が世界各地で起こりました。昨年1月、ハイチ大震災が発生した当初は、米国を始めとした先進国から莫大な寄付金が集まりましたが、震災から時間が経つに連れて人々の関心は薄れ、忘れら去られていきました。

 しかし震災から約1年経った現在でも被災者からのニーズは高まる一方です。ニューヨークタイムズが発表した11月10日のヘッドラインによると、昨年10月からハイチで蔓延しているコレラの感染者は来年年明けまでに27万人にまで上るそうです。

 このように、時間と共に薄れる人々の関心をどのように繋ぎとめるのか、地域によって大きな差が出る寄附金額をどのように理解するのか、私たちのレポートは十分な結論を出せたとは言えません。

 しかし、今回のリサーチで浮び上がったことは、チャリティーに参加する人たちは多くの場合、直接の情報や交流を求めているということです。すなわち問題を「ジブンゴト」として捉えたいという気持ちを持っているということではないでしょうか?その気持ちにどのように応えていくか、受入団体にとって参考になる情報が、このレポートに含まれていれば幸いです。

 ただし、今回のリサーチでは、寄附をしたりボランティアをしたりする側の意見ばかり集めてしまいましたが、寄附を受ける側やボランティアを迎える側から見ると、別の意見があるかもしれません。この点は、今後のリサーチ課題として、引き続き調べて行きたいと思います。


Vol.1 チャリティーの文化
Vol.2 「寄付」と「税制」の関連性
Vol.3 チャリティーの動機とコミュニケーションの重要さ
Vol.4 ボランティアという選択肢

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