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コミュニティ・スクール -新しい学校- 

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田中 実
day
2004-01-24
 

コミュニティ・スクールという挑戦

 日本の学校が変わり始めている。経済不況に相まって社会が大きな変化を強いられている中、日本は画一的な教育を続けてきた。教育は国から与えられるものという認識のもと、学校制度から外れた子供たちが逃げ場を失い、落ちこぼれとみなされてきた。

 日本型教育の問題点が指摘される一方、新しい学校を作ろうという声が目立ちはじめてきている。その1つがコミュニティ・スクールである。これまで画一的になりがちだった公立学校運営に、地域の人々が主体的にかかわり学校教育に参加していきながら、共同して学校を運営していこうというものである。これにより学校教育の中に多様性が生まれ、地域の活性化も可能になる。

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 すでに日本の小学校でも、地域に開かれた学校として運営されている学校がいくつか存在する。その1つが東京の三鷹市立第四小学校である。この学校には、さまざまなバックグランドを持つ大人が、子供の教育現場にボランティアとして参加している。

 このボンランティア制度は登録制をとっていて、当初20名程度の登録から始まり、現在では150人の人がこのボランティアに関わっている。この教育ボランティアは「コミュニティ・ティーチャー(地域の専門家:CT)」「スタディ・アドバイザー(学習支援:SA)」「きらめきボランティア(クラブ活動の支援者)」の三つにわかれて登録されている。

 コミュニティ・ティーチャーとは、医師のような専門知識を持った人が講師として授業に参加する。例えば、医師には理科の時間に「動物の誕生」について授業をしてもらったりしている。スタディ・アドバイザーは、主に保護者の方が多く、算数などの授業中に実際にクラスに参加して学習支援を行っている。きらめきボランティアは授業前や放課後を利用して、地域や保護者の方々が実施する課外のクラブ活動である。英会話や点字、手話、パソコンなどのクラブがある。自主的なクラブで子供たちが自由に選んで参加できるし、塾などがある子供たちは参加しない。

 このように子供たちは学校の先生だけでなく様々な職業の人たちや専門、特技をもつ人たちと学校内で交流することができ、小学校自体が1つのコミュニティの場となっている。当然のことながら、子供は多様の出会いを持つことによって、従来の画一的な教育では得ることのなかった活きた知識等を得る機会を持つことになる。このようなユニークな学校作りをしている貝ノ瀬滋校長にコミュニティ・スクールの特色などの話を伺った。

 このような学校を作ろうと思ったのは何故ですか?

 「この学校に校長として赴任してきたのは平成11年ですが、それまでは教育委員会にいました。その頃からこのような学校運営を考えていて提案などをしていましたが、やる人がいなかったので着任後に自ら行うようになりました。」

コミュニティ・スクールが必要と思われるようになったのは何故ですか?

 「1つの理由として、子供たちのコミュニケーション力が落ちていることがありました。生活環境の変化により子供が外で遊ぶことが少なくなりました。学校外の人たちと接点を持つことが少なくなることによりコミュニケーション能力が低下しています。地域の人たちに学校教育に参加してもらうことにより、出会いの多様性が生まれ生徒のコミュニケーション能力が向上すると思いました。多くの様々な人たちと触れ合い揉まれることによって、心が弱りがちな今の子供たちが心身ともにたくましく成長して欲しいと考えています。」

 「次世代を背負う子供たちには、早くからいろいろな経験を積んで、自分で考え問題を解決する能力を育むことが必要だと考えています。その意味でも、地域に開かれた学校を作り多様な学習の場を作ることにより、人間力を形成してもらいたいです。またボランティアに参加する大人も新たな生きがいなどを発見し、そのことが地域の活性化につながると考えています。」

「人間力」を育むとはどういうことですか?

「今の子供たちはどちらかというと、自分ひとりで自己実現を図ろうとする傾向にあります。しかし、人間は一人では生きられないものです。お互い協力しながら成長していってもらいたいと考えています。もちろんその過程で傷ついたり、困難な場面に出会うこともあるでしょう。そういう場面に直面しても乗り越えていける総合的な力を「人間力」として捉えています。この人間力を多様な教育の中で培ってほしいと考えています。

この学校では人間力を育む教育の一環として起業教育も取り入れていますが具体的にはどのようなものですか?

 「社会変化のスピードが加速する中、変化への対応力、問題解決能力が問われるようになってきました。このような背景もあり、起業体験をすることにより今後の時代に適応できる力を育むことも期待しています。実際の授業では、校庭で拾った銀杏を洗って商品化し、実際に販売するところまで行います。その過程では営業、宣伝、商品開発などの役割から始まり市場調査にもとづいたプランを考え販売し決算報告まで行います。銀行からの借り入れ手続きなども学習します。このような起業教育は日本では珍しいですが、外国では以前から取り組んでいる国があります。フィンランドは学力世界第1位ということで注目を浴びていますが10年ほど前から幼稚園から起業教育を導入しています」

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 このように地域に開かれた学校を作ることにより、教育に多様性が生まれるのは間違いないであろう。また教室という密室で行われてきた教育がガラス張りになることになり、教師の資質向上にもつながる。このような多様性教育で救われる生徒も少なくないであろう。あるコミュニティー・スクールでは不登校ゼロの実績を残している学校もあるくらいである。教育とは「自立できる人間を育てること」と語る貝ノ瀬校長の今後の新しい学校創りに注目していきたい。


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