グローバリゼーションに関する国際会議 先日、北カリフォルニアにあるサンフランシスコ大学(University of San Francisco)で、グローバリゼーションに関する国際会議が開催された。 この会議を企画したのは、サンフランシスコ大学とインターディシプリナリー研究所という非営利組織で、インターディシプリナリー(学際)というのは、簡単に言うと「ある事柄に対して異なる分野の専門家が横断的に集まって解決策を模索する」手法のことである。 インターディシプリナリー研究所の主宰者で、今回のシンポジウムの仕掛け人でもあるグリュンヴァルト氏は、非常に議論好きな面倒見のいいおじいさんで、若い頃に東欧から米国に亡命してきた学者である。(以前一度だけ彼に出身国のことを聞いた時があったが、いつも話し好きの彼が、その時だけは言葉少なく「今はもう解体してしまって、私の祖国はどこにも無いんだ。」と一言話しただけで終わってしまった・・・) そんな人間味豊かな彼のもとには、アフリカやヨーロッパ、中近東、アジア等のあらゆる国から経済学者や文化人類学者、社会学者、法学者、宗教学者、国連の政策担当者、行政関係者、NGO関係者など多彩な顔ぶれの約50名が集まり、会議では「グローバリゼーション」という大きな事象を切り口として、様々な視点から現状と課題について討議しあった。 基本的な会議の議論の方向性としては、「グローバリゼーションは、もはや止められない現象である。では、その現象を認識した上で、現在グローバリゼーションがどのような変化を各国にもたらしており、何が課題となっているか」ということを、まず各報告者が自身の専門分野の視点から調査・報告し、それについて他の専門家が異なる分野の視点から意見を述べるという手法が採られた。 具体的には、以下の7つテーマに分け、 アメリカが強い主導権を発揮しているWTOやIMF、World Bankなどの国際機関が現在グローバル化において果たしている役割から、途上国の一次産業従事者の動向や移住に関する動向、NGOや国連、宗教関係者、各国政府が果たすべき役割といったことにまで、幅広いトピックが話し合われた。 基調講演:グローバリゼーションを取り巻く現状と課題 パネル1:グローバリゼーション:脅威なのか、明るい未来なのか パネル2:多国籍企業の現状と課題 パネル3:グローバリゼーションと開発 パネル4:グローバリゼーションとアイデンティティ パネル5:メディアと異文化コミュニケーション パネル6:キリスト教とイスラム教の対話と人権 パネル7:文化・コミュニティ・宗教とグローバリゼーション 会議は、4日間にわたり早朝から夜遅くまで行われ、特に2日目・3日目は『自主研究会』として正規のプログラム時間内では討議が尽くせなかったパネルについて自発的に集まった参加者達による意見交換が夜遅くまで行われた。 例えば「グローバリゼーションと開発」のパネルでは、ある国際ジャーナリストが、アフリカの珈琲豆栽培農家を密着取材し、珈琲豆が複数の仲買組織を経て先進国の消費者の手に渡るまでの流れを追い、生産農家と消費者が支払う額に大きな差額が生じている原因を詳細に報告した。 それを受けてNGO代表者が、アフリカの珈琲豆生産者が、次々と麻薬生産用植物の生産に転嫁していく現状を報告し、別の経済学者が、WTOカンクン会議の閣僚会議でどのような内容が話し合われ、経済学的観点から、何故アフリカ諸国と先進国の交渉が決裂したかについて解説を行ったりした。 そして、夜の自主勉強会では、発端となった珈琲豆に関する自主制作の映画が上映され、その後、会議時に提供されている珈琲豆がフェアトレードによるものではないため、主催者が翌日以降の珈琲豆をフェアトレードによるものに注文し直すという珍事にまで発展した。
[会議参加者による自発的な夜の研究会で、試写が行われたインディペンデント映画「Black GOLD」のプロモポスター]
その他、9.11以降アメリカ国内で大きな問題になっているイスラム系移民に対する迫害や差別に関して、宗教解釈と現実の差別の実態に関し、キリスト教専門家とイスラム教専門家による対話を試みるはずが、激しい宗教議論に発展し、コーランや聖書の文言の細かい解釈等まで含め、ほぼ夜通し議論が続けられたりもした。 全てのパネル終了後に、仕掛け人のグリュンヴァルト氏が述べた「グローバリゼーションは、往々にして強者の独占支配につながりやすいが、きちんとグローバリゼーションの仕組みと利害関係者の位置や理論を把握していけば、必要な政策や知識が自ずと見えてくる。そこにはグローバリゼーションと決して対立する必要の無い『多様性』や『地域性』も含まれているのである。」という言葉が実感として胸に響いた会議であった。
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