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誰でも学校や職場で人とケンカしてしまってイヤな気分になったり、あるいは、自分が望むような結果にならずに不満を持ったりしたことがあると思う。
そういう時に、「もっと学校や職場で、友人や同僚と良好な関係を保ちながら、自分にとって利益になるように相手を誘導したり、自分の立場を強くしたりするにはどうしたら良いか」ということを考えたことは無いだろうか・・・。
そんなことをいろいろ突き詰めたのが「交渉学」という分野だ。
交渉学
ロースクールやMBAなどでは、すでに馴染みの言葉かもしれない。でもそんな専門分野に限らず、私たちが普段全く立場の違う人と一つの物事を成し遂げなければならない時や、異国の人と良好な人間関係を築いていったりしていく場合にもけっこうヒントになる部分がいくつかあるのではないかと思い、今回は簡単に交渉学の世界を紹介してみたいと思う。
よく交渉学の最初のころに学ぶのは、以下のような「オレンジ」の事例である。

ここに100円のオレンジが1つだけあります。
このオレンジをAさんとBさんの2人が買いたがっています。
AさんもBさんも「自分がこのオレンジを1個まるごと買う」と言って譲らず、並行線をたどり険悪な雰囲気になってきました。
そこで、AさんとBさんは、お互いに「なぜオレンジが1個まるごと欲しいのか?」ということを説明しあってみることにしました。
すると、詳しく話を聞いた結果、Aさんは、「コップ1杯の生のオレンジジュースがどうしても飲みたいのでオレンジ1個分の実が欲しい」ということが分かり、Bさんは、「オレンジケーキを作りたいので、オレンジ1個分の皮が欲しい」ということが分かりました。
そこで、2人で半額ずつ出し合ってオレンジを1個買い、Aさんはオレンジの実まるごと1個分を半額の50円で、Bさんもオレンジの皮まるごと1個分を同じく半額で得ることができて、とても満足しました。また、オレンジも、実も皮も捨てられずに有効に使われるという結果になりました。
交渉学では、これを「可能性の掘り起こし」といったり「パイの最大化」と言ったりする。この理論を、現実の例に置き換えてみると・・・・
松下(現パナソニック)、キヤノン、日立の「可能性の掘り起こし」
2007年12月に松下、キヤノン、日立の3社がディスプレイ開発で連合を形成したことが大きなニュースになったことを覚えている人はいるだろうか。
なぜこの3社の技術提携(アライアンス)が大きなニュースになったかというと、もともとキヤノンと松下はデジタルカメラ産業で競合しており、普通に考えるとデジタルカメラも関係するディスプレイの分野で手を組むことは、まず考えられないからである。
しかし3社は、この競合問題を解決するためにオレンジ型の交渉努力を行い、その成果を手にした。 3社がどのようにオレンジの実と皮を分けたかというと、以下の図のようになる。

少々専門的な話になってしまうが、新しいディスプレイ技術の開発の際には、液晶ディスプレイに使用されている「TFT」という技術が必要になってくる。 しかし、キヤノンはデジカメに使用する小型のディスプレイ新技術を開発するに当たってこの「TFT」技術を持っていなかった。
一方、松下は家電メーカーとして大型テレビの製品ラインナップは必須であるが、現在持っている技術はプラズマであり、大型の液晶技術は持っていなかった。そして現在、プラズマディスプレイは液晶ディスプレイに押されているため、松下は大型の液晶技術を手に入れたかった。
「TFT」と「大型の液晶技術」、この両方の技術を持っているのが日立ディスプレイズであり、その技術が両者は欲しかった。
しかし、もし3社が単純な技術提携を締結しようとすると、競合分野が重なってしまう。通常であれば、日立ディスプレイズは、キヤノンか松下のどちらか一方としか技術提携はできない。そこでキヤノンと松下は、それぞれ別の分野で日立ディスプレイズと協力し、提携分野の住み分けを行うことで、この3社連合を誕生させたのである。
こうした交渉ごとは、日常、いろいろな人が意識的・無意識的に様々な場面で行っているが、天性的にこうした交渉ごとが上手な人もいれば、あまり得意でない人もいる。
交渉学は、あまり得意でない人でも得意な人になれるような知識や技術、論理的な考え方を学ぶチャンスの一つになる。
そして、こうした交渉学の様々な論理を応用すると、いろんなところで滞っていた交渉ごとや人間関係が結構スムーズになるのではないかと思う。
例えば家族から孤立してしまっているお父さん、上司を上手に説得して仕事をスムーズにしていきたい人など、今までの「視点や手法を少し変えてみる」きっかけになるかもしれない。
もし少しでも興味をもったら、巷には、交渉学に関連する本がたくさん溢れているので、目に止まった本をパラパラと眺めて自分に合うと思ったものを選んでみるとよいのではないだろうか。
エモーショナル・インテリジェンス~カリフォルニア・ダイバーシティ Vol.2~
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