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ちかくにアート

~アート系NPOの活動を通して~

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八戸秀一
day
2004-05-15
 

・ 自分の手でつくる箱

 今までの芸術・文化振興策は、文化ホールなど所謂「箱もの」が過剰に優先させてきた。文化施設を建設することでアートが放つ独特の香りに浸っていたのである。この根拠のない満足感は公演や展示など「箱の中身」の育成をおろそかにし、ハードの供給とソフトの質を全く不均衡にしてしまった。またステレオタイプ的だったアートのイメージは時間の流れに合わせて多様化し、今までのような無難な総合ホールでは既にアーティストも鑑賞者も満足させることが出来なくなっている。その流れの中でふらの演劇工房とC.A.Pは、自分達が望むソフトを自ら造り出した。

 全国には同様のNPOが複数あり、多くの人が時間をかけてそれぞれの地域にあった活動をしている。アートを身近に届けることで、それぞれの場所で人々は結びつき地域の個性を生み出して活性化へと発展させていく。また近くにアートの活動を通して、失われつつあるコミュニティーも新たな形で再構築され、地域社会でアートは表現とは別に独自の役割を担い始めたのである。


箱の外へ

・アウトリーチ

 芸術や文化を鑑賞する時、私達は劇場や美術館などへ足を運ぶ。しかしメディアの扱いは小さく、得られる情報量が相当少ないために、魅力的であったりユニークな展覧会でも気付かずにいることが多い。興味引かれる公演や発表があっても、手間などを考えると自然と足が遠のいてしまう。多くの人に鑑賞してもらう発表は、アーティストの意に反し愛好者や友人・知人など身内に限定されがちで閉鎖的になり易い。それならばアーティストが自ら出かけ機会を作ってしまおうとアートを箱から連れ出すアウトリーチ(Outreach)が広がりを見せている。  

・ これからのために

 2001年7月にスタートしたNPO団体「芸術家と子どもたち」は、東京を中心とした小学校へと出かけいく。2002年度は28校約2800人と交流し、2003年度も前年同様に28校を訪れた。訪問先では、2002年度から完全実施された「総合的な学習の時間」を軸として、子どもたちとワークショップを通して一緒に創作活動をするのである。内容はダンスや音楽、時には映像制作であるのだが、アーティストが子ども達と身体を動かしてコミュニケーションを取りながら一緒に作品を作り上げていく過程を大切にしている。塾や習い事など教育環境の変化の中で、時間に追われる子どもたちにアートを直接感じる機会を与え、子どもだけが持つ想像力と創造力、そして表現力を引き出して成長させていくを目的としているからである。音楽や美術の授業のような数字で優劣はつけず、大人はきっかけを与える。それだけで子どもたちは自ら楽しい場所と時間を作り上げていくのだ。大人は少し手伝うだけで子どもたちが持つ感性に出会うことができ、そして出会わなければいけない。

 アーティストは作品の公演や発表でアートの最終消費とするだけでなく、アウトリーチ活動によって将来のアートの裾野を広げる先行投資的な役割も引き受けている。同時にアートを子どもたちに直接届けることで、学校に依存し過ぎた教育に表現の分野から貢献できる可能性を示した。アートが果たせる子どもたちの成長をアーティストが担い始めている。

社会の中でアートの役割

 経済成長を経た日本は熟成社会になり、必要なものには困らなくなった。そして今の私達が望むものは、物質的なものから内面へと移行している。「今」を作るために犠牲になっていたものは必要性を再認識され、人の心に様々な感性を注ぐ芸術と文化が本来の役割を果たすことが望まれている。各地で盛んになっているアート系NPOの活動は自発的でありながら、時の流れの中で必然的とも言えるだろう。心が心の変化を求め始めたのである。最近よく使われる「癒し」という心に対する負の言葉が姿を消し、気持ちの豊かさが物質のように溢れる時が待ち遠しい。


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