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映画ロケで商店街活性化めざせ-住民参加のフィルム・コミッション-

NPOカルチャーネットワーク

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井山美穂
day
2004-01-17
 

住民参加のフィルム・コミッション

 「映画で商店街を元気にしていきましょう」。そう呼びかけたのは、福島県白河市のNPO「カルチャーネットワーク」代表、越後啓子さん。同NPOが実質的なフィルム・コミッションとして誘致した映画「らくだ銀座」が好評だ。これは地域密着・市民参加をコンセプトに、住民約700人がエキストラ出演して撮影されたもの。白河市での公開を皮切りに、あえて映画館での公開はせず、全国の商店街を巡回上映していくのが特徴だ。当面はビデオ・レンタルの予定もない。

 フィルム・コミッションとは、ロケを誘致し、地元のボランティアとともに撮影を支援する民間組織である。ロケ隊滞在や観光客増加による経済効果や、地域活性化が期待されている。しかし「らくだ銀座」は、従来のフィルム・コミッションとは様相が異なり、制作や上映にまで住民が積極的に関わった。さらに単に商店街で上映するだけでなく、上映に合わせて各地で「らくだ祭り」が開催され、映画関連グッズも連動販売される。

架空の商店街ストーリー

 物語は架空の商店街が舞台となる。個性豊かな商店主たちが騒動を起こす中、八百屋の跡継ぎ青年が、ある事件をきっかけに商売の神様「らくだ様」に思いを馳せ、地元への愛着を訴えるというストーリー。子供からお年寄りまでが一緒に楽しめる作品に仕上がった。

 監督は林弘樹さん。主演は岩崎充則さん。そして吉田日出子さん、峰岸徹さんらが脇を固める。今回、白河市が選ばれたのは、越後さんが林監督に撮影誘致をもちかけ、快諾を得たのがきっかけ。空間プロデューサーの肩書きを持つ越後さんは、Iターンを機に、まちづくりに対する行政や住民の役割を考えるようになった。越後さんは撮影を一時的なイベントに終わらせず、映画を巡回上映し、商店街活性を図ることを提案した。さっそく、賛同した仲間がロケ支援プロジェクトチームを発足。越後さんが総合プロデューサーを買って出た。

 越後さんは、映画の制作・上映など企画運営すべてを地域活性に結びつける発想を、ビジネスモデルとして特許申請している。映画関連グッズの製作権も取得し、地元商工業者によるオリジナル商品の製造販売を可能にした。また、映画の入場料は「らくだ商店会会員証」として発行。このチケットは上映1回観覧付きで、商店街で特典が受けられる仕組みになっている。映画の後も「らくだ銀座」が縁で出会った人との繋がりを大切にしていこうとの願いを込めた。

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 プロジェクトの発足後は、事業説明会、ロケ地選定ツアー、宣伝用ショートムービー上映会、公開オーディションと、制作過程のすべてが地域住民を巻き込む形で行われた。8月に始まった撮影は、何度も長雨にたたられ、住民のボランティアスタッフは、撮影の許認可、ロケ隊の宿泊手配、企業の協賛募集、エキストラの手配など慣れない作業に追われた。次々と難題が浮上した。衝突し去っていった者もいた。それでもスタッフは笑顔を絶やさなかった。

 撮影と並行して、「ホームページ製作プロジェクト」、タイアップ商品を開発する「らくだ市場プロジェクト」、子供たちが撮影体験する「Kid's監督プロジェクト」が設立された。なかでも「手作り絵本プロジェクト」には240冊ものらくだ絵本が出品され、最優秀作品は出版社を通じて発刊された。これら制作者側と住民との共同プロジェクトも、映画の地元との一体感を強め、商店街活性の機運を上昇させる原動力となった。

らくだ祭り

 「らくだ銀座」はその興行方法とともに、制作発表や試写会のスタイルも異例で注目を集めた。文化庁は10月24日、東京国立近代美術館フィルムセンターで、フィルム・コミッションのシンポジウムを開催。大作のみ上映されてきた同会場において、山田洋次氏、寺脇研氏らを前に「らくだ銀座」の特別上映が実現した。11月9日には、都庁において「史上最大の商店街祭り」のメインとして制作発表と試写会を実施。好評を博した。

 いよいよ封切り当日。会場は立ち見客で超満員。日頃、見慣れた商店街の光景が映し出される。住民が育てた野菜も映っている。エキストラ出演者の中に何人も知り合いの顔を見つける。観客たちは盛んに歓声を上げ、どんどんストーリーに惹き込まれていった。

 商店街では「らくだ祭り」が同時開催され、ラクダに乗った市長を小学生の鼓笛隊、保育園児のらくだアーチが出迎えた。白河らくだるま、ミニ電車もパレード。らくだコロッケ、らくだっしゅ(酒)は完売。らくだタペストリー、映画紹介パネルも展示された。歩行者天国には露店が並び、花火や大道芸が繰り広げられ、買い物客には商品券が配られた。

 「この数ヶ月間、ほとんど賭けに近い気持ちで、一気に突っ走ってきた」と越後さん。莫大な制作費などかけず、新人監督、新人脚本家、新人プロデューサー、新人俳優、住民が結束し、それぞれの持ち場で力を出しきった。映画に勇気づけられ、起業する人も現れた。「らくだ銀座」は地域活性を目指す商店街応援映画として、最高のスタートを切った。

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 越後さんには既に、次の映画制作の依頼が殺到している。「市民が支える映画文化をつくりたいんです」と熱い。今秋には、AFCI(国際フィルム・コミッショナーズ協会)の本拠ラスベガスで、国際フィルム・コミッショナーの資格を取得しようと計画中だ。越後さんは繰り返し言う。「夢は見るもの、いや、かなえるために闘うものです」と。

 「らくだ銀座」の行進は始まったばかりである。イベント・プロデュース部隊も同行し、地域活性化策や祭りのノウハウを一括提供する。二作目、三作目の続編が後を追う。「北の国から」「男はつらいよ」に続くシリーズ作品を目指して。

【福島県白河市】東京から新幹線で約1時間10分。人口約4万8千人(03年国勢調査)。郊外型商業施設の出現で、中心市街地の空洞化が進行。観光客数は年間約77万人(03年11月)。白河の関、南湖公園、白河だるまなどが有名。


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