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ドイツの裸事情II. 原始への帰還とテクノ・クラブ

文化東西南北 Vol.8

leader from from
たかもとみさこ ドイツ・ベルリン
day
2003-10-18
 

『キットカットクラブ』初体験 

 今回は軽いテーマでレポートしてみる。先々週の金曜日、夜遅く仕事から戻って、そのままアパートの床にバタンキューと倒れて寝込んでいたら、遊び好きな友達から電話がかかってきた。「今から車でむかえにいくからね。ちゃんとセクシーな格好しないと、入れないクラブに行くから。頼むわよ。」と、私の返事を聞くまでもなく、受話器を切ったのである。

 ベルリンで一番跳んでいるクラブに行くからには、私が寝ていようがいまいが、ご近所迷惑もかまわず、奴は私が起きるまで家のベルを鳴らし続けるだろう、と想像すると起き上がるしかない。そのクラブでは、なっていない服装で行くと、裸になるというルールがあるのは前から聞いていた。それだけはやはり、避けたい。しかも入場拒否されたあげく、周りに工場や事務所しかない一帯を、一人でとぼとぼ帰るのも悲しい。

服装チェックならぬ裸度チェック 

 友達は、弟君と、二人の友達を乗せた車で颯爽と現れた。キットカットクラブ初体験の男友達の一人は、気張ってスーツをバリッと着こなしている。とりあえず建物の中に入る入り口でのチェックは全員合格。お金を払ってクロークに荷物とジャケットを預けていたら、スーツの彼がクロークのお兄さんに止められる。「おい、君、スーツとシャツは脱がないと、それじゃだめだよ。」という。何のためによそ行きで決めてきたのか。彼は泣く泣く半裸になった。

  ホールの中に入るとしかし、その意味がわかった。つまりお洒落でいることが条件なのではなくて、なるべく裸に近い格好でいなければいけないというコンセプトなのだ。中にいる人のほとんどは、上半身はもちろん、下半身もタオルケットのような布一枚か、T-バックなのである。女性、男性にかかわらず、これではまさに、銭湯の風景だ。タンクトップとサブリナパンツの私は、自分が服を着込みすぎているのではないかと錯覚を起こしたほどだ。まさに服を着てお風呂場に入ってしまったように。

服無法地帯の暗黙の了解 

 その夜の音楽はテクノ。カップルでSMルックのひと、壁の鎖にみずからぶら下がっているお姉さん。車椅子に乗って踊るおじさん。小さな舞台でストリップを繰り広げるムキムキのお兄さん。もうだれが素人で玄人さんか見分けがつかない。其々が思い思いのことをして、無理強いはしない、不思議なルールがそこにはあった。

 ふとホールの角を見ると、人だかりになっている、好奇心から、ソウッと近づいてみると、なんと女性がシリコン製の男性器がついたベルトをつけて、男の人と交わっている。それを見たい人は集まってきて、見たり、参加したりするようだ。この手の露出趣味の人が利益のためではなく、みずからの楽しみのために好きなときに好きなことをしている。日本でこんなクラブ、成り立つのだろうか?ここではセキュリティーが充実しているせいもあるが、自由なだけにレイプも、セクハラもない。

一般向けの性解放クラブ 

 ジッと観察していると、誰かと何かを始めたい人は、目や態度でコミュニケーションを繰り返し、それとなく接近していくようだ。自分のボーダーを越えたら、意思表示をし、相手もそれ以上には進まないシステムなのである。このクラブには所謂世間でいう性的モラルが無いのだが、きちんとしたルールがある。もちろん、良く似たマニアクラブは何処にも存在するだろうが、このクラブの特徴は、普通に踊りたいだけ、飲みたいだけの人もやってくるという点だろう。つまり一般人にも門戸が開かれている。ドイツ人のセクシュアリティーに関する、ロマンティックの欠乏は、前の「裸事情」でもレポートしたが、近代化を突っ走ってきた彼らが、原始への帰還として性の解放に向かうのがその原因だ。

 「皆裸だから、なんか暖かいでしょ。いつも皆黒づくめで歩いているからさ。」

 そう言われてみると、確かにライトに照らされた様々な身体はとても暖かい卵色の光を反射している。皆妙に幸せそうに笑っている。体格もばらばらで、一般には、美しいとは言えない体の持ち主もおかまいなしだ。人に見せるための裸ではなく、自分のための裸が、そこにはあった。


「ドイツ裸事情FKK対日本混浴(下)」
「ドイツ裸事情FKK対日本混浴(上)」 

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