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"ドイツ・ベルリンにおけるスクワット"(2)

スクワット「クーピー」 ~文化・東西南北 Vol.5~

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たかもとみさこ ドイツ・ベルリン
day
2003-01-13
 

1.左翼vs右翼闘争

 「1990年から93年は戦争だった。」

当時のスクワット運動に詳しい彼女が言った。アジア系の彼女は、スクワットに住む友人を訪ねるとき、携帯催涙ガスとこん棒を、肌身離さなかったという。東西を分けるベルリンの壁が無くなり、右翼と左翼が、ちょうど抗争を始めた時期だ。毎週のように、仲間が怪我をし、スクワットの窓が割られていた。殺されたスクワッターもいる。

「当時にくらべれば、今は天国よ。」彼女は言った

90年代も半ばをすぎると、スキンヘッズも、だんだん郊外に追いやられ、スクワットの連中に攻撃をかけることも、デモを除けば、ほとんどなくなった。ゲルマン系でない容貌の外国人達も、夜中一人で行動できる範囲が増えた。それと同時に、スクワット内の空気も変わった。窓にはめられていた鉄格子が外され、一般の人々の出入りに、それほどピリピリしなくなっている。

2.スクワット"クーピー"

 クーピーは1990年にできた。当時多くのスクワッターが、旧東ドイツからハンガリーを通って、西ドイツに渡ったのに対し、クーピーのメンツは、旧西ベルリンから東の地域へやって来た。当時誰も興味を示さなかったその地区も、統一後の今では、どんどん新しい建築が建てられようとしている。クーピーの向かい側には、夜になると赤々と電光をはなつ巨大クレーン車が並び、まるで近未来SFの世界だ。

[スクワット内部]


 1991年から、クーピーは法的にも契約を結び、今では約60名が安価な家賃で住んでいる。そこで生まれた子供もいれば、新しくやって来た若者もいる。巨大な建物全体は、住居としての機能以外に、カフェ、図書館、あるいは安価にビデオをコピーしてくれるような場所さえ提供している。

3.クーピーで朝食を

 カメラマンのヒロシ君をつれて、スクワット"クーピー"の朝食に行って来た。朝食といっても、正午から3時までだ。扉を開けると、ストーブに薪をくべて、トレーナーをいくつにも重ね着したパンクスが集っており、左側の机上に手作りのビュッフェがおかれている。右手のカウンターに腰掛けて、ほとんどただに近いお茶を、すっかりストーンした様子のお兄さんに入れてもらう。すると、突然後ろから、興奮した一人の男が、ギョロっとした眼を向けて、話し掛けて来た。

「おまえらどこから来たんだ?日本?そりゃー丁度よかった。俺さあ、毎月日本のフィルムをここの映画館で見せてるんだよ。月末にまたやるからさ、しっかり宣伝しておいてくれよ!」

どうもレンタルショップのDVDをコピーして見せるらしい。もちろん入場料はただである。。

4.クーピーの映画館

 クーピーの映画館は地下の暗い階段を降りたところにある。それはただの手作りカフェといった風で、道で拾ってきたのか、形がバラバラの椅子が幾つかと、小さなバーがある。一方の壁には、学校の教室で見るような引き伸ばし式のスクリーンがあって、映写機を使って、コンピューターの画面を映し出す仕組み。私は、ハーブで煮詰めた暖かい赤ワイン"グリューヴァイン"を飲みながら、「バトル・ロワイヤル」を観た。

[スクワット内部]


 次々にスクワットの住人達が映画館の中に入ってくる。そこはまるで、大家族の居間だ。見知らぬ訪ね人にも、そう反応する様子もない。壁崩壊当時の緊張感は、そこには、全く無い。かつての右翼との闘争は、今では立ち退き運動との戦いとすりかわり、多少のストレスはあっても、日常は守られている。命をはって戦うほどの敵との抗争は、今では存在しないのだ。体制、ファシズムといったものに、"アンチテーゼ"として存在して来た彼らも、"アンチ"であることの意味がもはや無い。そしてエネルギーの余った「活動家」は、外国の民族解放運動に参加していった。

 日本映画を見せることに情熱を注ぐギョロ眼の男は、クーピーの政治的機能について話しをふったとたん無口になった。スクワットは、これからの生き残り作戦として、文化施設へと、その容貌を変えようとしている。存在する体制に対抗し、それらを破壊して来た彼らが、今後創造的な活動に手を伸ばしてゆくことは、とても興味深い。ベルリンという町が変わるとともに、彼らの方向性も変化しつつあるのだ。 


ベルリンのオルタナティブ映画館『アルセナル』 
"ドイツ・ベルリンにおけるスクワット"(1)

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