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-カウンセラーの需要が高まっているのは、どうしてなのでしょうか?
心理の専門家としてのカウンセラーの必要性は、10年以上前からずっと言われてきました。ですが、近年までその必要性は無視ないし軽視されつづけてきたのです。最近需要が高まったというよりは、むしろ需要の高さがようやく正しく認識されだしたと見るべきでしょう。
理由はいくつか考えられます。まずは、不登校やいじめの増加です。特にスクールカウンセラーが重要視されてきたのは、これらの問題が悪化したことが大きな要因でしょう。
次に、阪神大震災の影響があります。震災を契機に、自然災害後の心理ケアが見直されだしたからです。あとは少年犯罪や猟奇犯罪の多発や、家庭内虐待が明るみになるケースが増えたことが考えられます。これら社会問題の悪化に加えて、社会の意識が変化し、精神的な事柄にも目を向けるようになってきたからでもあるでしょう。
-カウンセラーの必要性が再認識される中、推し進められてきたスクールカウンセラー活用事業ですが、現状はどのようなものなのでしょうか?
現在、スクールカウンセラーとして派遣されているのは多くの場合臨床心理士です。本来なら学校心理士の仕事なのでしょうが、学校心理士は数も少なく、また研究志向的な趣が強いため、実際の学校現場でカウンセリングをする実践的な技術に欠けていると思います。
臨床心理士は本来医療現場での患者待遇の改善を目的としていますが、一番実践的な技術を持っていますし、様々な分野の心理問題に応用できる基礎を身に付けています。そのため、スクールカウンセラーとして成果を挙げることが出来ているのでしょう。
-ただ現実問題として、臨床心理士の数は圧倒的に不足しているそうですね。その打開策として、臨床心理士の育成を急ぐべきだという意見がありますが…
確かに、需要の高さからすれば臨床心理士の数は不足しています。ですが、育成して数を増やせばいいと安易に考えるべきではないと思います。心理士の需要には限界があり、急に育成して数を増やせば、遠くないうちに心理士があぶれることになるでしょう。それ以前に、そもそも心理の専門家を短期間で育成することはできません。もしそんなことをすれば、臨床心理士の専門性と質は大きく低下してしまいます。
―別の意見として、教師がカウンセリングを勉強してカウンセラーになればいいという意見もありますが、それも難しいでしょうか?
まず無理でしょう。なぜなら、学校の教師とカウンセラーとでは全く職分が違うからです。教師とは、決められた時間枠の中で大人数の生徒達を育てる仕事です。ですが、教師がいくら優秀でも、中には集団のペースについていけない子がいます。スクールカウンセラーはそういった子供たち一人一人を個々のペースに合わせてフォローする、いわば教師のサポート役です。両者が協力し補完しあうことが、より良い教育環境につながります。
決して「教師がダメだから、カウンセラーが必要」なわけではないのです。残念なことに、教師・カウンセラーともにこのように間違った思い込みに陥りやすいようです。結果として教師は自分の能力や指導に自信を失い、最悪カウンセラーと対立してしまうことになってしまいます。
葛藤・対立を生む背景には、日本の担任制があるかもしれません。それが悪いということではないのですが、クラス担任の教師は、生徒の学業だけでなく心理教育なども全て責任を持っていますが、それは日本に独特な特徴なのです。
アメリカでは、個々の生徒の適性の発見・支援や、対人問題や精神保健などの心理教育はカウンセラーの管轄として区分されています。それ故カウンセリング心理学が展開しやすかったのでしょう。日本の担任制が悪いわけではなく、むしろよく機能してきていたのですが、現代の困難な状況に対応していく必要が求められているのです。少なくとも教師とカウンセラーが互いの職分をちゃんと理解しあう必要があるでしょう。
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