Kiss Cafeはいい意味でお客を「お客さん」扱いしない場所でもある。NPO Kiss*の池谷さん曰く、ここには「お店の人とお客さんの区別がない」のだそうだ。Kiss Cafeの利用案内には “みなさんの「できるコト」を提供してください”と気軽に書いてある。「できるコト」は運営資金の寄付だったり、ボランティアだったり、イベントの企画だったりと様々だ。いわばリビングを拠点にした文化の持ち寄りパーティーみたいなノリだ。
Kiss Cafeには経営者と利用者の境界線を取り除くためのちょっと変わった「ツール」もある。このカフェでは年会費を払って「オーナー会員」になったり、カフェの時間のシェア料金を払うことによって「シェアードカフェマスター」になったり、カフェの中で流通する通貨「kiss Cafe債券」を買ったりすることもできる。「オーナー」「シェア」「債券」?どのツールも、ここ場所がサービスを一方的に受け取る場ではなくて、参加者の「できるコト」の総体=Kiss Cafeだということをうまく表している。Kiss Cafeに参加すると、カフェは自分の一部になり、自分はカフェの一部になるというわけだ。
kiss cafeではライブやビデオ上映などと組合わさってのアート・カフェもよく開催されるそうだ。劇場やアートギャラリーで畏まって鑑賞されるアートとは違って、「リビング」でのアートの魅力は日常からほんの数歩遊びに出たくらいの身近さにある。飲んだり食べたり、おしゃべりしたりというリラックスした雰囲気の中で営まれるアートは、たぶん消化されても消費されはしない。おいしく、楽しく、美しい時間を共有した人たちは新たにまたつながって、満たされたお腹と刺激された感性の幸福な時間の中から、次なるアートが自然発生してくるのだろう。次の宴の主役はあなたかもしれない。
[参加してOK!]
Kiss Cafeを中心となって立ち上げたのは建築家やデザイナーといったプロの知識を持つ人たちだそうだが、Kiss Cafeという場のあり方のデザインや、様々な「ツール」のデザイン自体が彼らの手による一つのアート作品だと言うこともできそうだ。ハードもソフトも含めてのKiss Cafeという自由な表現の場を、遊びのルールを了解した人たちによって使いこなされ、育てられ、遊ばれ、見守られる住民参加型アートとして捉えてみても面白いかもしれない。