reports

サステナビリティ

back
prev_btnnext_btn
title

空飛ぶモニョンゴロ村

森なしに生きられない Vol.2

leader from from
伴昌彦 東京都 伴昌彦 東京都
day
2007-10-06
 

モニョンゴロ村を支えるボランティア

 モニョンゴロ村には国際NGOを通じて世界各国から老若男女様々なボランティアが訪れる。薪作りや農産物の生産をボランティアが支援しているのだ。

ブルーベリー収穫


 ブルーベリーの収穫は7月~9月。私が訪れたのはちょうど8月のブルーベリーの収穫期に当たり、朝夕の摘み取りを手伝わせてもらった。

 「カナカナカナ・・・」「トッキョキョカキョク!」周囲を森に囲まれた早朝のブルーベリー農園には、ヒグラシやホトトギスの声が響いている。ブルーベリー摘みは重労働ではない。一粒々々が小さく軽いし、仕事は涼しい時間帯。セミや鳥の声を聞きながら無心に摘み取りをするのはむしろ気持ちがいいくらいだ。

 摘み取りに対して報酬は出ないが、労働時間は早朝と夕方の合計5~6時間だけだし、ボランティアは無料で宿泊できる。これが出稼ぎ労働者であれば話は別だが、旅行者にとってモニョンゴロ村は、非日常的な体験や出会いの場を提供してくれる場であり、格安の宿でもある。

 私が訪れた時には、韓国、台湾、イタリア、ドイツからの長期ボランティアに加え、自立塾の塾生や東京での会社員生活を辞めて戻ってきたという地元の青年、以前スタッフとして働いていた女性もボランティアとして参加していた。以前村に関わった人達がその後も村との関わりを持ち続け、活動を支えているのは村の魅力によるものだろう。

 ボランティアには様々な国籍の人がいるので、国民性や文化の違いが見られるのも楽しみのひとつだ。この村に来た動機も農業への関心や田舎暮らし、日本の文化への関心など様々。一日で帰ってしまう人もいるが、長い人は半年以上も滞在していく。

 ブルーベリーの収穫の際は、佐藤さんや他のボランティアさんから「摘み取りながら食べていい」と言われたので、時々口の中にも放り込み、次第にどれが甘くて瑞々しいブルーベリーかが分かるようになってきた。普通のブルーベリーの観光農園ではわざわざお金を払って収穫させてもらうことを考えれば、ただで取り放題、食い放題なのだから申し訳ないような気分になる。

 とは言え、このブルーベリーの一粒々々がグループホームの人達の生活を支えたり、ケニアの病気の少年の命を救ったり(後述するが、モニョンゴロ村はケニアの子供の支援も行っている)するのかと思うと、そんなにバクバク食う気にもなれない。 ボランティアが皆、好き放題に食べてしまっては、このブルーベリー農園も到底採算が取れないであろうが、人に信頼されれば、それを裏切るようなことはしたくなくなる。佐藤さんの持つ人への信頼が、摘み取る人達の節度を育んでいるように思えた。

村のお金

  モニョンゴロ村では日本円の他、「モニョン紙幣」が使われている。「大きなマネー」は強い軍隊を持った国のマネーだと佐藤さんは言う。モニョンはそれとは違うマネーを目指して作られた。地域通貨は珍しくないが、モニョン紙幣がユニークなのは子供だけが発行できるという点。

モニョン紙幣


 紙幣はケニアのスラムの子供達が描いた絵で、裏面に絵を描いた子供の名前と発行年月日が書いてある。医療費に教育費…、お金が必要なのは大人よりもむしろ子供達なので、子供に発行をまかせてみたという。といっても誰でも好きなだけ発行できるわけではない。モニョン紙幣の発行が認められるのは必要な時だけだ。例えば、ケニアのマグソンスクールという学校では、貧しくて治療を受けられない病気の学友のために子供達が絵を描いてモニョン紙幣を発行した。

 円との交換比率は1モニョンが100円で、使い道は現地で子供達の支援を行う専門家に委ねているそうだ。モニョンゴロ村で支援するのは主に小さな団体。AIDSの治療などは大きな援助機関がやっているので、そこから漏れた腎臓病などの子供達を援助する小さな組織を、モニョンを通じて支援しているそうだ。

 佐藤さんによれば、薪を購入する人は薪ストーブを所有しているくらいなので、経済的に余裕のある人が多い。こうした人にも活動を広げるため、いずれは薪の落札価格の一割をモニョンにすることも考えているそうだ。 モニョン紙幣は1年経つとお金としては使えなくなる。いつまでも使えると貯めこむばかりで有効に活用されないからだ。しかしお金としては使えなくなってもモニョン紙幣は子供達の作品としていつまでも楽しめる。ボランティアの韓国人女性は「私の宝物です」と言ってモニョン紙幣を見せてくれた。

 モニョンで買えるのは基本的にモニョンゴロ村のサービス。しかし地元のイタリアンレストランにもこの紙幣が使えるところがあるそうだ。大きな軍事力や経済力に支えられた信頼はないが、モニョン紙幣には人と人との信頼に支えられていた。

小さな村の大きな力

 「大事なことはモニョンゴロ村を大きくすることではなくて、そんな小さな村がたくさんできること」佐藤さんは言う。モニョンゴロ村は小さな団体だ。しかし、確実に何人かの人にセーフティネットを、出会いや学びの場を提供し、放棄されていた資源を有効活用し、貧困のために死にゆく子供の命を救っている。佐藤さんは「模倣」の大切さを強調していたが、小さな試みも大勢の人間が真似をすれば、世界は大きく変わるだろう。

 佐藤さんのような理想を持つ人は他にもいるだろう。しかし大半の人が、もっとお金が出来たら、もっと経験を積んだら、もっと知識がついたら等と思いながら、何もしないまま過ごしているのではないだろうか。自分に何も出来ないと思っている人は是非この村を訪れてみて欲しい。きっと何かを真似したくなるだろう。 (了)


1 2

都市農地を活用する試み(3)-倉沢里山の会
都市農地を活用する試み(2)-こだいら菜の花プロジェクト
都市農地を活用する試み(1)-東久留米市一歩の会
森を壊さないカレーを食うために ~パーム油フリーカレー~

このエントリーをはてなブックマークに追加





クリエイティブ・コモンズ メンバー募集 メルマガ 受託型リサーチ レアリゼブックストア サポーター募集 twitter mixi face Flickr