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三章 憂鬱
学生耕作隊を続ける中、私にはなかなか立ち直れないことがあった。その原因は事務局スタッフとの信頼関係づくりである。一緒に事務局をやっていた仲間がどんどんやめる時期があった。1人になってしまったこともある。自分のリーダーシップのなさにうんざりし、ずっと塞ぎこんでいる時期もあった。
そんなとき、ある一人の尊敬する農家の方から、個人的に手伝いに来てほしいと仕事の依頼があった。手伝いに行き、仕事が終わった後、「近藤さんが来てくれて、本当に助かったよ。夫婦2人では収穫がとても追いつかなかったんだ。気持ちもとっても楽に なったよ。本当にありがとう」と、心から温まる感謝の言葉をいただいた。
私はその時、「この学生耕作隊の仕組みを必要としてくださる方がいらっしゃるのに、一体私は何をしていたのだろう」と反省し、少しずつだが、またがんばれるようになっていった。リーダーシップ関係の本を読みあさり、自分の悪いところを直すように努力していった。そうしていくことで、1人また1人と、一緒に事務局で働いてくれる仲間が増えていった。
 秋芳梨 摘果 そうこうするうちに、私は大学院に進学し、そして修了した。修了後はもちろん学生耕作隊の専従スタッフとして働くことに決めた。そんな私と一緒に専従で働いてくれるという人も現れた。本当に嬉しかった。ところが、その人は半年後、やりたいことができたと辞めてしまった。期待をかけ、頼りにしていただけに、そのショックは大きかった。
再び憂鬱な時期が訪れ、何に対しても自信を持てなくなった。自分を責め、人と人との信頼関係を作ることのできない自分に、嫌気が差していたが、学生耕作隊をやめるわけにはいかなかった。
幸か不幸か、また、実力の有無に係らず、明るいニュースの少ない農業の分野で挑戦的な試みを続ける学生耕作隊への世間からの期待は、私にとって物凄い重みがあった。それを投げ出すわけにはいかない、期待は背負うものであり、それを裏切ることはすなわち罪悪だと、私は思っていた。
そんな私を救ってくれたのは、私の恩師であり、現副理事長の片岡氏だった。彼は私に「構想を立て、仕事を創り、役割分担し、作業に落とす、ということが曖昧になっていている」、と問題点を率直に指摘してくださっただけでなく、仕事上の相談相手になってもくださった。問題が分かれば、あとは解決する方法を探せばいい。
それからは、私の気持ちも前向きになり、事務局のメンバーも倍に増えた。卒業後、学生耕作隊で自分の夢がかなえられるからと、専従で働きたいと言ってくれる学生も現れた。私にも、みんなから力を借りていることに対する感謝の気持ちが素直に芽生え、謙虚さが身についたように思う。きっと、私のリーダーシップは、「引っ張っていく」だけになっていたことが問題だったのだ。
「信頼関係」という言葉が、今、とても重く温かいものとなって感じるようになった。私は運営事務局を、単なる仕事仲間ではなく、より絆の強い「ファミリー」にしたいと思っている。(つづく)
近藤紀子/NPO法人学生耕作隊理事長
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