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身の丈アートの喜び ~豊中インキュベーションセンターMOMO~

アートによるコミュニティづくり

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山野修平
day
2004-06-15
 

 このコンテストは、島根県出身及び在住の学生が参加し、地元の財(モノ・カネ・ヒト)を生かして、新しいビジネスプランや価値を創造し、発表していくイベントだ。その実現に向けて、島根の人たちが財を持ち寄って協力し、街の活性化の皮切りとなっていく。島根には、豊富な食材、由緒ある歴史、海や温泉など観光資源もあるが、今必要なのは島根の特性や財、自らの持つ技術(専門分野・得意分野)を活かす人材を発掘・応援していくことである。それがイベントを運営した島根大学『ベンチャービジネス論』学生事務局の狙いだった。

 このコンテストに、無事実験を終えたペイント自転車の防犯システムを引っ提げて、参加することになった。豊中のペインティング教室でも協力してくれた、島根県でペイントでリサイクル事業に取り組む若者起業家佐藤大典さんも応援してくれることになった。

 コンテストの前日まで、プレゼンの準備を重ねた。前日も、佐藤さんと徹夜で練習をした。練習してもなお、気持ち悪さが残る。どうしても消えない。すると、佐藤さんが真剣なまなざしになる。「山野君が本当に伝えたいことは何か?これを正直に言ってみなよ!今の気持ちを言ってみなよ!」と、やや語気を荒げて言う。そこから一気に頭がクリアになった。そして、自転車の防犯が8割9割を占めていたプレゼン内容を一気に変更した。

 本番3日前の2月4日、NHKが防犯実験の取材にやってきた。それに合わせて、奈良大学美術部の仲間を迎えて、自転車やロッカーにペイントをしてもらった。その間、来てくれた仲間が「楽しんでくれるのか?」ということを常に気にかけていた。ずっと不安だった。しかし彼らが帰宅した後、その内の一人から、「楽しかった!本当に本気でこれからも来たい!」というメールが送られてきた。「本当に本気で・・・」。その一言が鮮明で、防犯実験の成果より嬉しかった。素直に嬉しかった。

 「嬉しくてたまらなかった2月4日の鮮明な一言」。「島根の人に思いが伝わるかどうか?今も不安な気持ちでいること」。プレゼンでは、この二つをありったけの気持ちで伝えようと決心した。その後佐藤さんと、明け方まで何度も何度もぶつかった。

 本番を迎えた。テレビ会議システムのモニター越しに、「山野ガンバレ」の文字を掲げ、ありったけの熱気で応援してくれる大阪MOMOの仲間たち。一緒にコンテストの準備をして、短期間で距離が縮まった島根ビジネスプランコンテストを運営する学生スタッフ。大雪の中にもかかわらず見に来てくれた親父をはじめ家族。皆に後押しされた。そのおかげで、コンテストに優勝することができた。

 「アート・遊び・仕掛け」を生活の中に取り入れていく。これを仲間と楽しむことができる人々の繋がりが、生活を元気にする。それが、僕が見つけた、僕の目指すものだ。これを皆に共感してもらった喜びのあまり卒倒しそうだった。

4.身の丈アートの喜び

―MOMO内装からつくるもの―

 そして今、MOMOの講習室の内装を皮切りに、「働きたくなる職場作り構想」を掲げ、「アート・遊び・仕掛け」と「仕事」が一体となった職場を、「空間というハードの面」、「人と人とのコミュニケーショというソフトの面」から、つくりつづけている。

 今手がけている講習室の内装の雰囲気を簡単に紹介したいと思う。

 「空間というハードの面」。もともと黒板のあった壁。当然のように黒板をはずす。まず、暖色のペンキを混ぜたしっくいを塗る。そして、鳥や草の芽の模様を描く。さらに、非合理的で不細工だが、何だか形の面白い棚を取り付けてみる。しっくい壁の対面の壁は、落ち着いたダークグレーでペイント。配電盤の扉やコンセント盤にも細かい絵を描く。ゴミとなった椅子とワイヤーホイールの丸板を拾ってきて、椅子を互い違いに組み、ネジ四本で0円のテーブルを作る。画一的な模様の天井を打ち抜くと梁が現れる。配管の通っている頑丈な横穴を見つけ、そこに一本のロープを通して、ブランコをつくる。無駄な大きさと黄色のペイントが特徴の、持ち運びが不便極まりない飾り階段をつくる。

[天井をぶち抜く]

 「人と人とのコミュニケーショというソフトの面」。奈良大学美術部の現役生やOB。彼らは、自分の好きな日、好きな時間にやってくる。そして、アイディアと元気を燃焼させる。日にちと時間は少ないが、一つ一つの持ち寄りの大きさはいつも想像を越える。引きこもり中心の生活を送っていた僕の同級生が、MOMOに進んでやってきて内装のイニシアティブを取るようになり、現在はMOMOのインターンとして仕事をするようになった。それから、ペイント自転車や内装がきっかけで、個展やコンクールの出展など、次々と行動を起こす女の子。彼女は今、手作りの雑貨屋の立ち上げを目指して頑張っている。

 MOMOの起業家さんが1歳から5歳の子供をつれてくる。僕らは子守りをしながら仕事をする。お礼に昼食をご馳走になる。子供を興に乗せると壁に落書きされるが、「また上から塗り直したらいいじゃないか・・・」と優しい気持ちになれる。起業家さんが仕事の合間に壁塗りを手伝ってくれる。それに影響され、自らの持ち場もデザインを変える。23歳のMOMOインキュベーションマネージャーが、ブランコで忙しい頭を癒す。

 毎日毎日、目が離せない。忍者屋敷や秘密基地のような面白い構造のビル。そして起業家さんやインターンの仲間たちが、思いがけない言動や行動で感動させてくれる。笑わせてくれる。泣かせてくれる。嬉しくなる。

 思うに、アートとは、色や形に見えるものと、人の行動や情動そのものであると思う。つまり、衣食住、健康・スポーツ、育児や福祉など、ありとあらゆる業態や、生活環境が横断的にかかわりあって出来上がる。そこに喜びがあれば、何だっていい。

 「楽しかった!本当に本気でこれからも来たい!」と本当に本気で言い合える関係をつくりたい。だから、MOMOへ行き続ける。だから、ペイント自転車やMOMO内装をやめない。


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