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「ニート」がパラサイトトリプル社会をつくるとき 

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玉村麦太郎
day
2004-12-29
 

 「ニートを放っておくと大問題になる」とマスコミは騒いでいる。また、来年度予算では約360億円が「ニート就業支援」のために認められたという。
 実際のところ、このまま「ニート」が増えていったらどうなるだろうか。
 「育て上げ」ネットの石山義典理事は「パラサイトトリプルの時代がきます」と顔をくもらせる。
 パラサイトトリプルって…?

 「育て上げ」ネットは「ニート」を含む若者の就労支援を行っているNPO団体だ。「ニート」が流行語になったこともあって、マスコミの取材も増えてきている。

 先日、ある親子が「育て上げ」ネットに相談を持ち込んだ。だが、通常のケースとはちがって、就労支援が必要なのは子どもではなく父親のほうだ。いま、実家に家族三人でパラサイトしているのだという。

 あなたはどう思うだろう。「良識に欠けている」と思うだろうか。「そもそも、子どもがいるのにパラサイトしているとはどういう料簡だ」と意見のひとつもしてみたくなるだろうか。

 でも、パラサイトパパにも、ちゃんと就労意欲がある。だからこそ相談にきたのだ。ただ、心理的抵抗感など、もろもろの理由で、それができないというだけのことなのだ。

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 「ニート」の問題はどんどん複雑化するいっぽうだ。なかには救済不能に陥っている「ニート」も少なくない。
 たとえば中高年の「ニート」の存在。「育て上げ」ネットには40歳を超えた「ニート」からの相談もあるが、就職までの責任が持てないので「お断りしている」という。

 どちらにしても、相談に来る若者のうち、実際にプログラムに参加するのは4人に1人にすぎない。「育て上げ」ネットに足を運ぶことに抵抗があるという若者も少なくなく、4分の3は救済不能だということになる。

 あなたはこういった事態に納得できるだろうか。それとも彼らに喝を入れたくなるだろうか。そして、喝を入れたくなったならば、そんなあなたは本当に正しいだろうか。

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 立川市にある「育て上げ」ネットの事務所を訪ねた。
 雑居ビルのワンフロアーである。そこでは若者たちが、チラシの整理や、「ワード」「エクセル」の講習に精を出していた。仕事に慣れようと、一所懸命である。その屈託のない笑顔は、とても仕事に就けない人のようには見えない。
 「まじめな子ばっかりです」と石山理事。

 「ニート」を就労意欲のない怠け者のように思っている人がいるかもしれないが、そういうタイプは、日本ではむしろ少数派だ。
 心理カウンセラーで教育学博士の諸富祥彦氏の本によると、いわゆる「引きこもり」には、反社会的であるどころか、過度に向社会的な若者が多いのだそうだ。社会に前向きに取り組もうと意識しすぎるから、よけいにうまくいかなくなるということらしい。


 「ニート」もそれにちょっと似ている。
 働く気は充分にある。ただ、適職についてこだわりが強く、「あんまり好きな仕事じゃないけど、まあ、いいか」というように、いい加減なところで割り切れないのだ、と石山理事は言う。
 世の中には、次から次へと仕事を変えて生きていく人もいるというのに、なんだかのんびりした話のようにも思える。

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 でも、わからなくもない。バブル時代とはちがって、いまや日本のカイシャはボロボロだ。弱肉強食を通り越して、強肉強食の時代だといえる。
 「そんななかにとびこんで、自分が生き残っていけるだろうか」
 …とうぜん、不安になる。
 夢を託すべき会社が見つからない。テキトーに世渡りをしていく才覚もない。なかなか社会に入り込めないから、いつしか自分から社会に排除される側へと回ってしまい、あとはズルズルと底なし沼。これが「ニート」の実情である。


 それをなんとか立ち直らせようというのが「育て上げ」ネットの仕事なのだ。
 石山理事は「育て上げ」ネットに通う若者について「コミュニケーションが苦手で要領が悪い人が多い」と言う。なかには、腹を割って話し始めるまで2ヶ月かかる場合もあるのだそうだ。今後は、「ニート」が企業で面接を受ける際に付き添うことなども考えているという。傍目から見ても、そのご苦労はたいへんなものに見えた。

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 …と書いたら、レアリゼのスタッフが「ちょっと待った…」と首をかしげた。自分は元「ニート」であるが「怠け者であったと思うし、いまでも怠け者だ」という。また「たしかに要領は悪いが、コミュニケーションが苦手だとは思わない」ともいう。
 なるほどね。それはきっと「怠け者」であることを自ら選択しているのだろう。私もしばしば「怠けるのも悪くない」と思うから、そういう「ニート」がいて不思議はない。

 実際、石山理事も「引きこもる権利がある、と主張する若者もいる」と言う。
 でも逆に、「ニート」本人にとって、「怠け者」であることがとても恥ずかしいことであったり、不安を引き起こすようなものだったとするならば、どうだろう。

 終身雇用や年功序列が死語となり、代わりに実力主義、年俸制、リストラということばがポピュラーになるなど、いまの社会は「怠け者は排除されるべきだ」というオブセッションを一所懸命刷り込んでいるように思える。
 そこであえて「怠け者」を選択し続けるには、勇気(あるい暢気?)、そして自信が必要だろう。自信を失ったならば、「怠け者」を許さない社会に巻き込まれ、なじめない世界に過度なまでに向き合うしかない。その結果、「引きこもり」や「ニート」は「過度の向社会性」とともに自滅してしまうのではないかと、私は思う。

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 われわれ「怠け者」には、とっても嫌なご時世である。
 「ニート」のうちの多くは、このようにメンタルな面でがんじがらめになってしまっている。だからこそ、ただの「ワークシェアリング」ではなく、メンタルな面でもシェアする気持ちを持たなければ、問題は決して解決しないのではないか。

 それに、そもそも彼らは「怠け者」として排除されるべき人たちなのだろうか。
 いまや大卒の5人に1人が「ニート」という時代だ。仮に、自分たちのうちの5人に1人をヘンだと考える集団があったとするならば、その集団自体がヘンであるのに違いない。本当はきっと、社会のほうがヘンになってしまっているのだ。
 この様子では、日本の家庭の五分の一がパラサイトトリプルになってしまう日も、そう遠くないかもしれない。

「育て上げ」ネット
http://www.sodateage.net/

諸富祥彦のホームページ
http://morotomi-y.hp.infoseek.co.jp/index.htm


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