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コミュニティビジネスの試みとして、託児所やベビーシッターで起業する構想を暖めている人も多いと思う。今回は、同様のアイディアを持つIさんからの依頼で、起業の際に選択する法人格によるメリット・デメリット、開業までに取得すべき認可等について調べてみた。
1.法人格を取得する場合
法人格を取得する場合、設立時の資本金と出資者数や役員数などの条件を満たしているかどうかが問題となってくる。その他には、出資者の責任範囲、助成金の適用、各種手続きや監督官庁に対する書類提出などに伴う事務の煩雑さや、要求される透明度などにも注意する必要がある。
1)株式会社と有限会社
まず設立時にまとまった資本が必要な法人として、株式会社と有限会社が挙げられる。資本金は、株式会社は1,000万円、有限会社は300万円が必要となる。そのほかの取り決めとしては、出資者(株主)は株式会社では1人以上上限なしだが、有限会社では1~50人と上限が定められている。取締役は株式会社では3人以上必要だが、各取締役に会社を代表する権限はなく代表取締役が会社を代表する。有限会社においては、取締役は1人以上で、代表取締役の設置は任意に決めることができる。代表取締役を設置した場合は会社を代表するが、それ以外の場合は各取締役が会社を代表する。監査役は株式会社では1人以上、有限会社では設置を任意に決めることが出来る(0人以上)。
株式会社では原則として取締役の任期は2年、監査役の任期は4年と決められており、任期が満了するごとに役員変更登記等の手続をとる必要がある。有限会社では役員の任期の規定はないが、定款により定めることが出来る。
株式会社においては原則として出資者による株券の発行、売買、譲渡は自由である。一方有限会社の出資者の持分(株式会社の株券に該当するもの)は有価証券化することができず、出資者以外に売買、譲渡するには社員総会の承認を受けなければならない。
2)確認株式会社・NPO法人・合資会社
小資本で設立可能な法人として、①確認株式会社・確認有限会社②NPO法人③合資会社が挙げられる。
①確認株式会社・確認有限会社とは、設立時の資本金が1円以上であれば設立から5年以内に最低出資金(株式会社1,000万円、有限会社300万円)を履行すればよい法人である。設立に経済産業大臣の認定が必要で、設立後に同大臣に書面を提出する。設立の申請には行政書士や税理士など専門家の支援が必要である。設立に必要な資金は、定款貼付の印紙4万円、公証人定款認証料5万円、登録免許税15万円、計24万円となる。また、毎年の決算後に同大臣に貸借対照表を提出する義務がある。社員数や役員数、監査数は株式会社・有限会社と同じ。
確認会社のデメリットとしては、銀行からの融資が受けにくいこと、5年間に1,000万円(300万円)を履行するというハードルが高いことが挙げられる。
②NPO法人とは民間非営利組織で、「政府の支配に属さず、利益を構成員に分配せず、社会に対して責任ある体制で継続的に存在するもの」を言う。資本金は不要。出資者は10人必要で、役員として3人以上の理事と1人以上の監事がいること 、また役員のうち報酬を受ける者の数が、役員総数の3分の1以下であることが条件となっている。設立に際しては、都道府県知事あるいは内閣総理大臣の承認を受ける。設立準備には通常8~12ヶ月(専門家に頼んだ場合4ヶ月)かかる。NPO法人のメリットには以下のようなものがある。すなわち、助成金などの収入源が多様なこと、法人税法上の収益事業以外の収入(会費や寄付金など)は非課税(ただし、税法上の収益事業を行う場合には法人住民税の均等割は課税)、自治体などの広報誌に無料で人員を募集したり広告を出したりできること、一般にイメージがよく公共の施設や設備を貸してもらい易いことなどである。
デメリットとしては、毎年総会を開催し事業報告書などを所轄官庁に報告する義務があるため(専門家の助言が必要となる)実際の事業以外の会議や事務が煩雑ということ、解散時には残余財産が個人などの寄付者には戻ってこないことが挙げられる。
③合資会社とは、設立時の資本金は2円以上で出資者は2名以上(有限責任社員1名、無限責任社員1名)を必要とする。有限責任社員には業務執行権がないため、出資比率に関係なく無限責任社員が経営権・代表権を有する。また、有限責任社員には競業避止義務がない。つまり、実質的には個人企業だが出資者を2名以上として法人格が与えられていることになる。メリットとしては、定款の認証や出資金保管証明書などが不要で設立手続きが簡便であること、取締役や監査役が不要で議決機関が無限責任社員のみであるため経営が迅速であることが挙げられる。合資会社の経営形態としては、夫婦経営型、ベンチャー企業型(投資者を有限責任社員とする)、SOHO運営型(SOHO事業者を有限責任社員として組織化し、無限責任社員が法人格をもった総合的な受注センターを運営する)、組合運営型(同業種、異業種の複数の事業を経営する無限責任社員を置く)などがある。
山口市内にある株式会社の託児所を取材したところ、託児所でのNPO法人は高い透明度を要求され、理事会や運営内容についての規制が厳しい一方で補助はイベントに対してのみ出され、実質的に広告費のみの補助がなされているだけにすぎないと言う。規制の厳しさに見合った補助を受けることが出来ているとは言いにくい。
ちなみにワーカーズコレクティブとは、構成員全員が出資者かつ従業員かつ経営者となり、非営利の市民事業に携わる形態である。現時点では法制化されておらず法人格がないため、金融機関からの融資、事務所の賃貸、各種杜会保険への加入などができない。また全員が経営者であるため、経営の意思決定が困難という点もデメリットとして挙げられる。
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