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3. SRIの現状
(ア) アメリカ
① 歴史
アメリカにおけるSRIの歴史は1920年代のキリスト教会の資産運用から端を発する。教会の持つ資産を運用するに当たって教義に反する企業への投資を排除するといったネガティブスクリーニングなSRIが始まった。ファンドの歴史では1971年にPax World Fundsが売り出した個人向けミューチュアル・ファンドが先駆けであった。70・80年代には伸び悩んだ後、90年代に入りSRIファンドは大きく拡大した。その理由は環境問題や労働慣行など社会問題への意識が高まったこと共に株式市場が好調であったことが挙げられる。
② 現状
Social Investment Forum(SIF)が発表した「2001 Trends Report」によると、アメリカのSRI型ミューチュアル・ファンド数は2001年末時点で181本と、95年の55本と比べて約3.3倍も増加している。SRIの資産残高合計も同時点で2兆3,200億ドル(約300兆円)と95年に比べて3倍以上に急拡大した。前述の通りこれは全米の専門的投資運用資産の12%にも相当する。また、SRI資産残高の中でも特に伸びが大きいのはポジティブスクリーニング型だ。95年と比較しても2001年には2兆ドル強と、約12倍の伸びを示した。
運用形態では1,360億ドルのミューチュアル・ファンドに対して個別勘定が1兆8,700億ドルと割合が大きい。個別勘定とは年金基金、財団、保険会社など機関投資家の資金を金融機関が運用する形態である。継続的に投資を行う機関投資家の資金がSRIに投入されていることで90年代の爆発的拡大が起こったと言える。現在SRIを行っているファンドは、投資信託会社と確定拠出年金基金が取り扱っている。
(イ) ヨーロッパ
① 歴史
アメリカと同じく1920年代の教会所有の資産を運用する際にネガティブスクリーニング型の投資行動を行ったことから歴史が始まる。ファンドとして成立したのも70年代に入ってからで、1974年にイギリスやドイツで社会や環境に配慮したプロジェクト融資を目的にした銀行が設立され、83年にはイギリスでSRI調査機関、Ethical Investment Research Service(ERIS)が誕生した。ヨーロッパ中にSRIが広がるのは同じく90年代で、今ではイギリス・フランス・スウェーデン・ベルギーの4カ国でヨーロッパ全体のファンド数の66%以上を占める程に盛んに行われている。
② 現状
Sustainable Investment Research International(Siri)グループがまとめたレポートによれば、2001年末時点でファンド数が280本と、たった2年で159本から約76%も急激に増加している。資産残高も99年の111億ユーロに比べ約30%増加の144億ユーロに拡大した。ファンドの数が多い国は上に書いたとおりだが、資産残高で見るとイギリスが最も大きく、ついでイタリア、オランダ、スイスであり、上位4カ国で全体の70%の資産残高を占める。アメリカと比較してヨーロッパでは政府が企業のCSRや投資家のSRIに介入することが多い。具体的には投資先企業によるSRIに関する情報開示ガイドラインを設定したり、年金運用会社に対してSRIを基準とした投資先選択を行っているかどうかを公表する義務を課す法改正が行われた。代表的な国であるイギリスでは公的、私的の年金運用会社のみならず投資信託会社、保険会社でもSRIを売り出している。
(ウ) 日本
① 歴史
欧米諸国に比べるとキリスト教精神の薄い日本でのSRIの歴史は当然ながらまだ日が浅い。1999年に日本で最初にSRIとして設定されたのが日興アセットマネジメントのエコファンドは環境問題に積極的に取り組んでいる企業へ投資するファンドである。開始と同時に1ヶ月の間に資産残高が500億円を突破する人気を集めたことで、他社もSRIファンドに追随した。
② 現状
現在では7ファンドが実際に運用・販売され、SRIを扱うファンドも投資信託会社のみに限られている。しかし国内の株式市場の低迷、エコファンドのパフォーマンスの不振、SRIの中心的役割を担う機関投資家の不在などが理由となり資産残高は著しく減少している。純資産額の合計は2003年4月末時点で640億円と、日本の株式投信全体の約0.4%にしかすぎない。
(つづく)
SRI(社会責任投資)(3)
SRI(社会責任投資)(1)
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