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4. SRIの効果
企業のCSRを促進する一つの手立てとしてSRIを考えた時に、SRIが果たして企業にCSRへの意識を高めさせているか、という結果をとても重視することになるのは当然である。SRI向け株式インデックスの登場はCSRを多様な指標を使って数値化し企業を格付けしようとするものであり、SRIの効果を目に見える形で表す貴重な情報の一つである。
代表的なインデックスには、スイスのSAM社と共同で行っているダウ・ジョーンズ社のDow Jones Sustainability Group Index(DJSGI)、イギリスのFTSE社のFTSE4Good Index、アメリカのDomini 400 Social Index(DSI)などがある。これらアメリカ、ヨーロッパのSRIインデックスはS&P500やDow Jones Global Indexなど一般の株価指数を上回るパフォーマンスを上げている。これらのインデックスはそれぞれに企業をアセスメントするに当たって独自の基準を設けており、その基準をクリアした企業のみがCSRを配慮するインデックス会社として含まれることになる。SRIを行うに際の貴重な判断基準にもなり一層のSRI活性化に一役買っている。
上に挙げたインデックスの中からFTSE4Goodの選定ステップを例に挙げてみよう。大きく分けて二段階あり、①FTSE All-Share Indexに含まれている全企業群の中から、ネガティブスクリーニングによって、タバコ・武器・核兵器製造業者や原子力発電所運営会社などを除去する。②FTSE内に設けられた独立委員会が、環境持続可能性、国際的人権の尊重、ステークホルダーとの建設的関係の構築の3側面に企業を分け、それぞれの側面で評価項目について優れた結果を残した企業を選別する。
FTSE社の報告によると、全企業2,123社の中から最終的にFTSE4Good指数に組み入れられる企業は年々増えている。2001年には711社だったが、2002年には784社、2003年には838社になり、今後も増加し続けていくと予想される。SRIの発展に伴って企業のCSRへの関心が実際に高まっているという証拠の一つと考えられるだろう。またFTSE4Good指数のパフォーマンスも前述の通りFTSE100やAll Shareの一般インデックスのパフォーマンスと比較しても相対的に高い実績を残しており、CSR重視の企業が経済的成功をも達成していることが伺える。
これらSRIインデックスの利用方法は投資家にとってのツールだけではなく、選定される企業の側にもニーズがある。企業としてもFTSE4Goodのインデックス企業に加えられることはIR活動やCSR活動の観点からも望ましいことであり、企業行動に変化を起こすきっかけと位置づけられるだろう。
5. SRIの今後の方向性
既にメインストリームになりつつあるアメリカ、ヨーロッパ諸国と、遅れを取る日本のSRIの未来の形は少し違ってくるだろう。前の二つの国と地域でSRIが広く浸透した背景には機関投資家の役割が大きい。前章の通り、安定した資金確保とSRI商品のパフォーマンスの良さは相互に関係性がありいわば鶏と卵だ。つまりどちらかが先というわけではなく、大量の資金を継続的に株式市場へ投入し続ける機関投資家がSRIにかける資金を確保し始めたことでSRIが商品としてパフォーマンスを上げることにもつながった。しかし機関投資家がSRI商品に投資するのはパフォーマンスがある程度見込めると判断したからである。
このことから、機関投資家が存在し彼らがSRIを継続的に行っている国でSRI商品が増加傾向にありCSRを重視する企業が増えるのも当然と言えるだろう。この国々ではCSRを収益性と並んで企業マネージメントの片翼と考える経営者が増える未来がもはやその目前に迫っている。
日本におけるSRIの可能性は上の二つの国・地域とは少し異なる方向にあるのではないか。世界の動きと逆流するように日本のSRI商品は減少傾向にあり、このままでは近い将来無くなってしまう可能性も決して否定できない。だが追い風になる状況も整いつつあるのも事実だ。数年前からの度重なる国内企業の不祥事がありCSRや企業の自社の不利な情報開示などへの関心が、投資家のみならず一消費者にまで前代未聞に高まっている。
これまで一人の消費者が企業に対して行うことの出来る抗議や行動は影響力が限定的だった。しかしSRIは一消費者でも始められるし企業の資金調達に関係するため影響力は比較にならないほど大きい。二度と過ちを企業に繰り返させるな、という思いからCSRを促す作用を持つSRIを行う動機は一般消費者に対しても十分に用意されSRIの可能性を握っている。
6. 提言
繰り返し述べるが、日本のSRIは衰退しそうな状況だ。その重要な理由の一つは日本の機関投資家の不在である。日本で活躍する機関投資家はほとんど外国人機関投資家と呼ばれ、自国でも並行して投資を行っている人々である。その投資家たちに日本のSRIの将来を任せようというのではSRIの明るい未来はかなり遠い将来の夢になってしまうだろう。よって個人所有の資金をいかに市場へ流入させるかは日本の株式市場活性化にとっても、またそれ以上にSRIを盛んにさせるためにも非常に大切な課題である。リスク回避傾向の強い個人投資家に対して安定したパフォーマンス、専門的知識が無くても分かりやすい商品の内容、情報開示は言うまでも無い。
しかしSRIの発展を現実的に推し進めていくには個人投資家の動因を間接的に促すだけでは十分ではない。個人が貯蓄目的で資産を預けている年金基金の資金をSRIに利用することは直接の手段で個人所有資産を投入する手法である。公的年金など継続的な投資の可能な基金からSRIを始めることで商品的価値が確立しパフォーマンスが確保される。一定の安定性を獲得できれば民間の様々なファンドも必ず追随しSRIが広く浸透することだろう。
FTSE社「FTSE4Good Philosophy & Criteria」
Dow Jones Sustainability Indexes
FTSE4Good Index Series
SRI(社会責任投資)(2)
SRI(社会責任投資)(1)
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