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多言語教育を容易にする文化

/第6回共同リサーチ:多言語教育の現状と課題 Vol.5 

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せきじえり 東京
day
2010-01-01
 

 前回まで、子どもたちの言語習得に大きな影響を及ぼす親の教育方針や、多言語教育を支える学校教育等の制度について見てきました。今回は、多言語教育を容易にする文化について見ていきます。

 世界のメンバーからの報告を読んで、多言語教育や文化の多様性に対する社会の意識は、文化によってかなり異なる印象を受けました。このような周囲の空気や社会の寛容性が、子どもの言語習得に影響を及ぼすことは言うまでもありません。

♦フランス在住のメンバーより

 『わたしのまわりは、子どもの保育園・幼稚園レベルでもインターナショナルです。親御さんと話していて必ず聞かれるのが「あなたが必ず日本語で話しかけているんでしょう?」ということです。「素晴らしいことだわ」「うらやましいわ」といった多言語教育を賞賛する声です。
 彼らにとっては、家庭で多言語教育ができる環境である以上、多言語教育は当たり前という姿勢です。多言語教育を受けられる環境にあることは、生まれながらの財産であり、大きな強みであると必ず言われます。むしろ、できる環境にあるのに多言語環境をしないほうが不自然というところでしょうか。』

 このような社会では、多言語教育をしようとする親に対して心理的な支えがあるために、多言語教育が容易になります。

 さらに、いくつかの文化では、親たちが大した努力もしないのに、子どもたちが多言語を駆使する能力を身につけることが、メンバーの報告から分かってきました。それが、バイカルチャーあるいは多文化社会と言われる社会です。

♦オランダのメンバーの友人(ベルギー在住)
 
 『0歳の時にベトナムからベルギーのワロン地方(フランス語圏)に移住した。3歳の時に、ブリュッセルに引越し、以来18歳までブリュッセルの学校に通った。
 家ではベトナム語、学校ではフランス語と小学校高学年から英語も習っていた為、初等教育で既に3カ国語を使い分ける生活になっていた。
 更に高校卒業後はフランダース地方(オランダ語圏)の音楽専門学校に進学した為、音楽はオランダ語で習得している。もっとも、ブリュッセルでもフランダース地方出身の友達もいたため、オランダ語は特に正規の教育を受けてなくとも、それまでに生活に不自由しない程度は習得していた。
 その後、スペインで2年ほど働いていたこともあったので、スペイン語も生活に不自由しない程度使いこなせる。スペイン語はフランス語と同じラテン言語なので、習得にはそれほど苦労しなかった。
 ブリュッセルのような多言語が当たり前の環境にいると、自然に多言語話者になるようです。5カ国語とも必要に駆られて自然に習得したようです。』

 このように、多言語・多文化社会と言われるような環境で育つと、自然に5ヶ国語を操るようになることも珍しくないようです。

言語と文化

 「ことばと文化を切り離して考えることはできない」と、よく言われます。メンバーからは、「ひとりの中に複数の言語や文化が存在する」ことを認めていこうとする意見が出されました。ヨーロッパでは、このような、<個人の中の複言語性・複文化性>を育成する手立てとして外国語教育を位置づけ、ヨーロッパの市民性を育てるための重要な要素としています。

♦アメリカ在住の日系移民一世のコメント(本人はバイリンガル)

 『バイリンガル教育はバイカルチャー無くして成し得ないと思われる。一生懸命子どもたちに言葉を教えても、それが何を意味するのかが伝わらない。言葉の字面だけ判っていても、バイリンガルと呼べるのだろうか。基本的には、本人の生活環境の中に、複数の文化が存在してバイリンガルになると思われる。』

♦フランス人と日本人の家庭における言語教育(フランス在住)

 『夫がフランス人、自分が日本人でフランス在住。子供が日仏のバイリンガルになるように努力しています。我が家にはフランスと日本の2つの文化が共存していると考えています。やはり文化を理解し、身につけるのには言語の習得が大切だと思います。』

 今回は、他言語教育を容易にする多文化社会について見てきました。次回は最終回です。
 このリサーチでは、バイリンガルな人々のアイデンティティはどのようになっているのだろう?という半ば好奇心による質問を入れてみたのですが、その回答が大変面白く、多種多様でした。

次回は、「多言語社会とアイデンティティ」についてです。


Vol.1 多言語状況における言語習得の問題
Vol.2 セミリンガル/ダブルリミテッドという問題(思春期までの言語習得の問題)
Vol.3 多言語環境における親の姿勢 
Vol.4 多言語教育を支える教育機関
Vol.6 多言語社会とアイデンティティ(最終回)

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