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「ベルリン中近東事情 ケバップ対シュヴァルマ」 (下)

文化・東西南北   Vol.2

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たかもとみさこ ドイツ・ベルリン
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2002-08-02
 

ドイツのファースト・フード№1!「ケバップ」

 さて、そんな一見ドイツ社会から孤立して見えるトルコ人世界も、食文化については、正反対だ。トルコ人ゲットーと化しているクロイツベルクや、隣のノイケルン地区では、トルコ人が経営する八百屋が幾つも軒を連ね、ベルリンッ子の胃袋を豊かにしてくれる。ここで水・金よう日にあるトルコ人の市場では、驚くように安い価格で、野菜が1キロ単位で売られている。

 出来和えのものでは、トルコの名物「ドナー・ケバップ」があちこちで見かけられる。薄くきった羊肉のグリルを、野菜と一緒にパンに挟んで食べる一種のファースト・フードだ。電気仕掛けの丸焼き用オーブンで、タテ1メートル弱、直径三十センチほどの羊肉の塊が、ゆっくりと、ギトギトした油をたらたらしながらまわっている。

 注文すると、髭を蓄えたおじさんが、大きな包丁や電動式の包丁を、その大きな肉の塊にほぼ並行に上下にあてながら、薄く削ぎ落としてくれ、レタスや、トマト、生玉ねぎと一緒に、白いパンに挟んでできあがりだ。

  トルコ人密集地には、余りに店舗が多いので、生き残り競争から、料金だってかなり安い。一つ200円で、おなかが一杯になるボリュームだけに、ドイツ人にもかなり人気が高い。ドイツ全体でみるとケバップの消費量はかなり高く、9300の店で、200から300トンのケバップが毎日製造されているらしい。これは某アメリカ2大ハンバーガー・ショップの、一年間の売上よりもはるかに多いから驚きだ。

ケバップとシュヴァルマの多様性

 ケバップは、もともと中近東、イスラム圏全般で見られる食べ物で、地域によってもいくらかの違いがある。18世紀にトルコで初めて「ドナー・ケバップ」という言葉が使われたそうだが、当時はファースト・フードのサンドイッチではなくて、ご飯と一緒に食べる立派なお食事だったそうだ(現在でも勿論お皿で注文できる)。

 ケバップとは焼肉、ドナーとは、回るという意味らしい。ベルリン中でも、バラエティーが豊富で、トルコ人が経営しているケバップ屋では、彼らが大好きなヨーグルトソースがふんだんにかけられているし、中身を挟むピダパンも、外がぱりぱりしてボリュームがある。そしてドイツ人経営のところでは、ソースにドイツ人が大好きなマヨネーズと、ポテトフライが入っているといった具合だ。

  さて、日本人にとって、中近東はイスラム一色のイメージしかなく、トルコ人だってレバノン人だってそう差はないように思われるが、トルコ人が多いベルリンでは、トルコ人と非トルコ・アラブ人という対立項がファースト・フードに見受けられる。

 レバノン人のケバップ屋では、ソースがヨーグルトではなくて、タヒニと呼ばれるゴマダレソースとヒヨコマメのペーストからできた、「フムス」と言われる茶色いドロッとしたソースがかかっている。パンも薄く、真ん中が空洞になっていて白い。このサンドイッチは「シュヴァルマ」と呼ばれ、同じイスラム教徒アラブ系でありながらも、彼らはトルコ人とは違って、「本物」をお客に出しているという誇りを持っている。

 「シュヴァルマと、ケバップは全然違うよ。ケバップはミンチできててるのさ。俺らのシュヴァルマは、本当の肉を焼いてるからね。だから美味いんだよ。」


「ベルリン中近東事情 ケバップ対シュヴァルマ」 (上)

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