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1.自分らしさにもどろう!
ふとしたことから、某スペインワインバーのおつまみを作ることになってしまった。
しばらく連絡が途切れていた友達に、電話したのがきっかけだ。カタルニア地方出身の彼女は、ドイツで日本学と経済学を専攻し、2年前に修士を取得して、某ドイツ企業に就職していた。最近たまたまスペインづいていた私は、スペイン語を学べば、白人社会以外の国々でも、多くの文化圏の人たちとコミュニケーションがとれるなあ、と考えていたところだ。早速彼女に電話して、週一度の交換授業を提案してみた。ちょうどドイツ企業で、日本語を話すチャンスがなかった彼女は、二つ返事で賛成してくれた。最初の授業は、長い間にたまりにたまった近況報告に始まった。
「私ね、そろそろ自分の根源に戻ろうと思って。」
ドイツでバリバリやっていた彼女が突然そう言い出した。
「根源って、何の?」
「スペイン人としてのよ。」
ドイツ人の旦那を持ち、滑らかなドイツ語を話す彼女。すっかりドイツの文化や生活になじんできたこの10年間を振り返って、「そろそろ、自分らしさをもういちど発見したい」というわけだ。
自分自身の根源にもどるために、彼女が選んだ道は、スペインワインとタパスを扱うお店を経営することだった。自分自身の自我と一番結びついているのは、小難しい論理的なことではなくて、「食生活」だったらしい。こうして、彼女の夢はとんとんと現実化にむかい、店の場所も決まり、会社も辞め、とうとう店長さんになってしまった。
2.無国籍おつまみの謎
日本にも1年ほど暮らしていた彼女が、言語の交換授業以外に私に求めたのは、日本料理だった。「ぎょうざ、食べたいなあ。」「やきとり。。。」とつぶやく彼女に、私はついつい「じゃあ、あなたのお店で私が週に一度おつまみつくるってのはどおう?」と提案してみたのだ。数ヶ月前に一度、某ワイン屋さんで、ワイン試飲会に訪れた30人分のおつまみを5種類作った私は、文化交流がこんなにも簡単に食文化を通してできるんだと、味を占めてもいたのだ。そのとき私に与えられた課題は、スペインの食材を使ってアジア風のおつまみを作ることだった(もちろんお客さんにとってそれは「純日本おつまみ」と理解されただろうが)。
日本ではよくある「無国籍」あるいは「多国籍」料理というやつだが、ドイツにはそういったタイプの居酒屋はほとんど存在しない。気がつかないうちに、ベトナム料理と中華料理がまぜこぜになったりはするものの、意識的に色々な国の食文化をミックスして創作料理を作るという観念は、高級レストラン以外では少ないようだ。
スペインでは、ご存知の方も多いと思うが、飲む際に小さなおつまみ「タパス」を食べる。ドイツでは、ビールやワインのおつまみは、「会話」だけとなるわけだが、さすが食文化を重んじるスペイン、食べることは欠かせない。余談だが、ヨーロッパで一番米好きなのもスペイン人だそうだ。これはアラビア文化の影響を受けているせいだろう。とにかく、そうした両文化の相似点を利用して、「無国籍アジアン」おつまみ計画は始まった。
3.和風であることの絶対原理とは?
彼女も、スペインワインバーで出すのだから、ワールドワイドな創作和風料理がいいと賛成した。「だけど日本人がきたら、これは日本の料理じゃないって怒るかしら。」というのだ。「いや、それは絶対にないよ。日本の居酒屋なんてのは、そういうので溢れてるんだから。」
「日本人が作る」多国籍料理風な日本のおつまみは、西欧に住む日本人にも問題がないが、ベトナム人が握る寿司屋は何故か信用がない。そうなると、日本人とそれ以外のお客さんに納得させるための「本物さ」を発見する必要が出てくる。つまり日本人客にとっては「創作和風料理」であり、日本人以外の客にとってもやはり「和風料理」でないといけない。そうした接点を発見してコンセプトを固めていくのが、これからの私の課題となった。
又しても問いかけたくなるのは、「じゃあ、和風って何さ?」ということである。何かいいアイデア、レシピをお持ちの方がいらしたらお便りいただきたい。
「ベルリン中近東事情 ケバップ対シュヴァルマ」 (下)
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「カステラ一本勝負 南蛮人対倭人」
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