|
Las Pavas事件
ところが、である。2009年夏、ダーボン社の子会社を巡る土地紛争に関するニュースが入ってきた。コロンビア北部のラス・パバスという町で、ダーボンの子会社テケマンダ社ともう一社で作るコンソーシウムが、購入した土地に住んでいた農民(120家族)を立ち退かせるように政府に求め、警察が農民を強制的に立ち退かせたというのである。多くのNGOが農民側に立ってダーボン社を非難した。ダーボン社の取り組みを知っていた私たちも大変驚いた。農民側の主張は次の通り。
「土地の元の持ち主であるエスコバル氏は、1992年の時点で土地を放棄しており、それ以降、農民がそこで農民アソシエーションを作り、耕作をしていた。しかし2003年にパラミリタリー(民兵)に脅迫され、2006年まで土地を離れた。しかしコロンビアでは3年間、土地を使用していた者に土地所有の権利が与えられる。そこで農民側は2006年、エスコバル氏の土地所有権の消滅手続をINCODER(農村開発院)に求めた。
しかし同年、農民が手続をしていることを知った「土地所有者」が、武装グループと共に農民を脅迫したため、農民は土地を離れた。その後、エスコバル氏は2006年12月、コンソーシウムに土地を売却した。そして、2009年7月、コンソーシウムは農民に立ち退きを要求した。」
私たちは、早速ダーボン社(ジャパン)に問合せを行い。2010年5月、カンポス社長に直接説明を求めた。ダーボン社の説明は次の通り。
「テケマンダ社が土地の調査に行ったのは2004年4月。そのときには土地が占有されている形跡はなかった。2006年12月に土地を購入したが、その時点で、土地の権利に関する正式な請求は存在していなかった。2008年~2008年、土地の人を雇い、フェンスを張るなど開発準備を行ったが、何の抗議もなかった。
2009年1月、武装グループが土地に侵入し、コンソーシウムの従業員を強制的に立ち退かせ占拠した。2009年7月裁判所は、土地を占拠している者に立ち退き命令を出したが、拒否されたため警察が占拠した。
同社が、2007年11月にINCODERが土地請求権を発生させたことを、2009年1月の時点で初めて認識した。INCODERは同社に何の連絡もしていなかった。」
両者の主張は食い違うのだが、最終的には、INCODERが2010年2月、土地の所有権はコンソーシウム側にあるという結論を出した。コロンビアの法的手続きとしては、これは最終決定となる。「問題の土地に出入りしていた農民はいるが、住んでいなかった。」ということだ。2009年8月にストップした開発は、2月から再開されている。
遠く離れたところにいる私達が真相を知ることは難しいのだが、事件が顕在化した2009年夏以降、ダーボン社が第三者機関への調査依頼を行い、真相追求に努めてきたのは間違いない。INCODERの他に、調査に当たった第三者機関グループは二つある。一つはコロンビアのNGO 、EnlazaColombiaで、調査報告を発表済み(スペイン語)、もう一つはクリスチャン・エイドとザ・ボディショップによるものだ。
ザ・ボディショップのサイトによると、レポートの発表は今年5月末の予定が7月に延期されたものの、まだ公開されていない。現在レビュー中だそうだ。私達は、ダーボン社を絶賛したECOCERTに対しても、今年1月に問合せたのだが、やはり、「現在調査中」という回答だった。
カンポス社長によると、いずれのレポートでも、土地所有を請求できるような形で農民達が生活していたことは否定している。ただし、「開発する土地の経緯について、事前によく調べるべきだった」、と結論付けているとのこと。
ただし、この地域は、何年もの間、反政府ゲリラとパラミリタリーが活発に活動してきた地域であり、土地所有の手続も大変混乱している。外の人間が理解するのは容易ではない。
ダーボン社としては、法的な面では結論が出たが、不満を持っている農民とは引き続き話し合いを続けており、上述した「平和のための連携」を、これらの農民を含む地域コミュニティに広げていくつもり、とのことだ。
ところで、この事件に関しては、ドイツのテレビが批判的に報道するなど、欧州での関心は高かったが、日本での問合せは私たちだけだったそうだ。パームオイルの問題に関しては、まだまだ関心が低い。ダーボン社では、NGOからの問合せは大歓迎だと言っているので、関心のある人はぜひ話を聞きに行ってみると良いと思う。
*RSPOに加盟していても、RSPO認証パーム油の取引をしていなければ、あまり意味がない。「RSPO参加」は現在、文字通り「免罪符」になっているのではないだろうか?
*本レポートは、パームオイルの問題に関心のある有志で作ったパームオイル・リサーチ・ユニットの中間報告です。
*ザ・ボディショップおよびクリスチャンエイドによる、Las Pavas Report は、7月30日に公開された。
(とりまとめ:三沢健直、伴昌彦)
カリマンタンにおけるプランテーション開発/BIN (中間報告 Vol.7)
サラワク州におけるプランテーション開発と先住民との関係/FoEジャパン(中間報告 Vol.5)
ボルネオ島のプランテーション開発/BCTジャパン (中間報告 Vol.4)
パームオイル代替オイルの可能性/バイオディーゼル燃料編 (中間報告 Vol.3)
パームオイルの流通現場からのヒアリング (中間報告 Vol.2)
パームオイルに関する政策提案の試みからリサーチ・ユニットへ (中間報告 Vol.1)
|