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地域の資金をコミュニティビジネスに集める仕組み
“起業オークション”とは、地域の問題解決を目指す事業での起業を考えている人と、それをさまざまな形で応援し育てようという人をマッチメイクし、地域にある「財」を持ち寄り形式で集めるイベントである。これまでPAグループによって、山口県をはじめ全国で開催されてきた。結果、それぞれの地域から約20名の起業家が誕生している。
このオークションは、ただお金を集めるという事だけでなく志ある人の自己実現や社会貢献を目的としている。発表者はあらかじめWWB/ジャパン主催の起業スクール等を受け社会的起業に共感を持っている人々なので、利益追求の古い体質の企業とは違い、自己実現や社会貢献を目的とした事業内容となっている。そのため、発表者を応援することはそのまま地域貢献につながる。
発表者が募るのは、お金に限らない。起業を目指す人が事業計画を発表し、人・物・お金・技術・情報など自分たちが必要としている支援をリストに挙げる。会場の参加者は、支援リストの中からそれぞれが応援できる範囲で応援表明する。例えば、後述する農作業を支援するNPO立ち上げを目指していた近藤紀子さんは、農作業に必要な農機具や肥料といった物や、若者に農作業を教えてくださる農家さんの応援を集めている。
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よく勘違いされるが、誰もが起業オークションで起業できるわけではない。目標金額に到達した人だけが起業をすることができる、という一定のハードルが設けられている。そうすることで発表者は事前に応援を集めようと当日まで親戚や知り合いの所をまわる。これが、そう簡単なことではない。行く先々で様々な評価をもらうことになる。非常に厳しい意見をいただくことも稀ではない。
それを正面から受け止め、応援を集めることの難しさを体験することで、まわりから応援してもらえることに対しての感謝の気持ちが生まれると同時に、起業することに本当に覚悟を決めるのだ。事業を必ず成功させなければという強い責任感も生まれる。私自身も経験してきたことだが、オークション前日になって、とてつもない緊張感や不安に駆られ、出場を辞退したい、逃げ出したいと考えた人は1人や2人ではないだろう。これが、実は起業までの大切な過程なのである。
またオークション当日も、発表者は事業計画の発表にとどまらず、いかに聞いている人の興味を引くかを考え、演出までを自らこなす。会場の参加者はその演出から発表者の人間味を感じ取ることができ、この人なら応援したいと思う。これもイベントとして行うオークションには欠かせない要素だ。
第1回公開起業オークション
2001年3月、山口県で初めて開催された公開起業オークションでは、19歳から51歳まで総勢20名が発表、そのうち11人が起業した。この日1日で、およそ1200万円というお金が会場から持ち寄られた。
出資を決めたのは、実際にサービスを受ける立場の主婦や若者、サラリーマン、公務員、また日頃から発表者の相談に乗って指導している大学の先生をはじめとした教育者など、51名のメンター(応援者)であった。オークション前、そしてその後もなんらかの関係性のある方からの出資がほとんどであることから、オークションは、地域においての人材育成、事業育ての仕組みという面が強い。コミュニティ意識を高め、他に依存しない地域の自立に向けた仕組みとなっている点が、新しい。
2002年度の山口公開起業オークションでは、学生耕作隊というNPO法人が91人から合計120万円の出資を受け起業した。農作業に関心のある若者を中心としたメンバーが人手不足に悩む農家へ有償で農作業支援にいくという事業を打ち立てたこのNPOは、地域のニーズをうまく拾い上げ、会場から多くの共感を得た。そして設立後は地域に浸透して勢力的に活動を行い、延べ2000人を農作業の現場に送り出すという実績を作り上げている。
設立から2年が経った今年の春には、新たに新卒者1名の雇用を作り出している。応援者の一人である菊池三郎さんは「中心的存在がただ独りになったことなどを克服されたこと、延べ千数百人の参加が有った事、いずれも立派な耕作隊の軌跡です。日本農業の起死回生の一助と成る事を期待しています。」と話す。学生耕作隊を応援し続けている地域のメンターにとって、耕作隊の成長はまるで自分のことのように嬉しいのだ。
地域財を活かす起業オークションとは (下)
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