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"女性起業家"とドイツの政策

- 世界の女性起業家シリーズVol.2 ドイツの女性起業家-

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たかもとみさこ ドイツ・ベルリン
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2003-06-14
 

ドイツにおける女性経営者の増加

 近年日本でも、小回りのきく革新的なヴェンチャー企業が注目を浴びているが、社会福祉システムと女性運動組織が、市民運動と国家政治のレベルでほぼ確立しているドイツ社会では、女性起業家を援助する施設が多く見られる。

 2001年の統計(ドイツ経営者団体Verband deutscher Unternehmerinnen e.V.)によれば、3,643,000人の経営者数のうち、約3割にあたる1,012,000人が女性である。そのうち311,000人は、フリーランスとして活躍している。22国間の国際統計によると(国名不明)、ドイツの経営者数は11位と、比較的上位であるのだから、それを考慮すれば女性の割合はまだまだ少ないというわけだ。(www.arbeitsrecht.de/berufsweltfrau/34.htm・サービスセンター"女性の独立経営"2002年10月18日)。

人気分野と東西の比較

 女性経営者に人気のある職業分野順に並べると、サービス業が(538,000名・53%)第一位。続いて、貿易・飲食業(346,000人・34%)、製造・建築業(80,000人・8%)、農業・林業(48,000人・5%)となる。女性経営者の数は、ベルリンが崩壊し、東西統一後確実に増えている。1998年までは特に激しく、毎年5%づつ全体経営者数中の女性の割合が増加し続けている。ちなみに旧東西ドイツ別にみてみると、旧西ドイツにおいては1992年で677,000人が女性経営者数であり、東ではわずか113,000名。2001年の時点では、旧西側が844,000人、旧東側が168,000人となっている。(注:www.vdu.de/inhalt.htm)

国の2本立て政策:職業訓練とリサーチセンターの確立

 さて、独立して経営者として新しく身をたてたい女性のために、ドイツ教育省では、様々な援助を行っている。援助を受ける対象となるのは、商業、政治、ネットワーク分野において活躍したいオリジナリティーのあるコンセプト持つ女性。特に重要なのは、援助を受けた後も、続けて経営者として働きたいという意志をもっていることだ。こうした女性企業家援助のために、国がもっとも力を入れているのは、職業教育施設である。

 各州や都市に、独立したい女性のためのセンターが設けられており、一旦子作りで仕事を引退した人、失業者、現在はサラリーマンだが、なにかお店を始めたい人のために、安価あるいは無料で、色々な授業やコースを提供している。なかでも、テクノロジー関連の中小企業設立を試みる女性のためのクラスは本当に多種多様だ。「21世紀のインフォメーションソサイエティー」という教育省のプログラムでは、2005年までに女性自営業者数を、少なくとも40%まで増やすことを目的としているからすごい。

 こうした職業訓練センターと同時に、新しく独立していく女性達を支える施設「IT分野における女性の研究リサーチ」では、国内外の女性経営者・起業家数を調査している。リサーチの対象は、商業のみでなく、政治界など公の仕事につく女性も含まれる。その他、教育機関や学校での職業訓練の状況調査、地区別の教育者(経営アドバイザーや、技術分野の教育者)のデータを収集、商業・教育・研究・政治分野における情報交換の場作り、女性経営者同士の体験やアイデア交換ができるネットワークの提供、EU内における女性起業家のための対策情報の収集やデータ作りがある。

女性経営者を支えるセンターのプログラム:ハンブルクとベルリンの例

 商業の町ハンブルクにある女性企業団体を例にとってみよう。ハンブルクでは50以上の女性職業団体が存在する。ハンブルク女性ネットワークフォーラムe.v.では、それらの団体間のコミュニケーションを課題としている。具体的な活動内容は、様々な分野のエキスパートを招いて講演を開催したり、ワークショップを開いたりといった具合だ。講演聴講やワークショップ参加に必要な費用は、国の援助でカバーされ、ほとんどが無料あるいは無いに等しい。(www.hamburger-frauennetzwerkforum.de)

 首都ベルリンにある女性経営者センターでも、ひっきりなしに新しいコースが提供されている。おもに重点が置かれているのは、経営スタートアップのためのコースで、交渉の方法や経理に関する知識についての講義、プレゼンテーションに欠かせない話術やそれに伴う呼吸法の講義、ビジネス文書の書き方、電話での正しい対応の仕方、雇用に関する法律のコースと、本当に様々である。こちらも講習費は幅広く、マンツーマンだと一時間4000円に上るものもあるが、7時間コースで1500円というものもある。現在失業中であったり、収入が少ないという女性のために、収入に応じた授業料システムも設けられており、経済的に苦しい状況の人でも、気軽に参加できるというわけだ。

ますます増える女性援助の傾向

 さて、こうした女性援助の傾向が増加するにあたって、被差別意識をもつ男性方もいる。4年前に美容院試験に合格した男性A氏は、独立してサロンを開こうと、各州にあるマイスター独立のための補助金を申請したところ断られた。その理由は、女性の場合、マイスター試験合格後5年間この援助金を受け取る権利を持つが、男性の場合は、合格後わずか3年しか猶予が与えられていないためであった。

 性差別が雇用法で禁止されている以上、不公平ではないかと訴えるこのA氏のような例も少なくは無い。A氏の訴訟は、幾つかの裁判所で勝訴に終わったということだが、女性対象の援助は減少するどころか、ドンドン増える傾向にある。むしろ男性の分まで回してゆこうという風潮もあるため、男性方もオチオチしていられないのが現状だ。但し、付け加えておくと、女性職業センターのなかには、独立を希望する男性も参加できるコースがある。


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