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東京の空中庭園 Vol.2

~ ヒートアイランドと屋上の植物たち~

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内山真
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2005-07-16
 

2.土は大問題

 屋上緑化する際に、まず考えなければならないのが「土」である。植物は、土の中で根をしっかり広げて、土の中の栄養分や水分を吸い上げ、風が吹いても倒れないようにしている。このため屋上には、植物が十分に根を広げることができるように土を敷きつめなければならない。

 ここで問題になるのが、屋上の強度である。ビルの屋上には無制限に重量物を置くことができない。屋上は、通常1平方メートル当たり180キログラムの重さまでしか耐えられず、地震を考えると、1平方メートル当たり60キロ以下になるようにしなければならない。普通の土は意外に重く、比重が約2である(1立方メートルあたり約2トン)。単純計算では屋上に3センチしか土を敷くことができない。

 屋上緑化を施工している企業では、この問題を解決するために軽量土壌を開発している。最近では比重が0.3以下の土もある。ただし、比重が1未満になると水に浮いて、豪雨の際に流れ出してしまったり、植物が倒れてしまうので注意が必要だ。

 実際に屋上を緑化している人々は、こうした人工土壌をあまり使っていない。そのかわりに、建築基準の何倍も強度の高いビルを建設していた。果樹を植えるために深さ60センチの土を入れたビルでは、基礎工事から特別注文でやってもらったそうである。

 学校や役所の建物は、建築基準が特に厳しく、普通のビルの数倍の強度がある。たとえばビオトープ(生態系を回復させることを目的とした施設)を作った旧原宿中学校には、屋上にプールがあり、約100トンの水を載せても大丈夫な建物だ。六本木ヒルズのビルでは、地震の揺れを小さくするために屋上に重りを載せてあり、その重りの一部として土を入れたそうだ。


 では、どのくらいの量の土が必要なのだろうか。これには、植物から考えていく考え方と、ヒートアイランド対策から考えていく考え方のふたつがある。

 ヒートアイランド現象は、都市部で発生する熱が多くなり、さらに冷えにくい条件が重なって起きている。エアコンや自動車などが熱を発生し、熱をため込みやすいコンクリートがビルや道路に使われている。また、東京には緑地がほとんどなくなり、周囲の温度を下げていた樹木が少なくなってしまっている。さらに、高いビルが隣接して建てられて風が吹かなくなり、熱い空気が溜まったままとなっているのも問題だ。

 屋上緑化では、ビルの断熱性を向上させるために、土を断熱材として使うという発想で行われている。エアコンの効きを良くして消費電力(発生する熱)を抑えようというわけだ。国土交通省や東京都は、土の厚さを何センチ以上にしたらよいか推奨値を示していないが、国土交通省では15センチの厚さで効果があったとしている。東京都では8センチで効果があったとしている。

 一方で、こうしたデータを疑問視する人々もいる。温度が下がったのは屋上庭園に水を撒いたから冷えたのであり、土によって断熱されたと考えるのには異論があるそうだ。

 多くのビルで屋上緑化が行われた場合、夏期の渇水時に水を撒くにはダムを建設しなければならなくなり、それでは都市の問題を別の地域に押し付けることになると批判する人もいる。また、新築のビルは十分に断熱されていて、効果があるのは断熱が悪い古いビルだけだろうと言う人もいる。多くの批判は計算上の話であり、結論は現在行われている実験の結果を待たなければならないようだ。

 土の厚さを植物の生育条件から決めるには、植えようと思っている植物の根が地中に何センチまで広がっているかがポイントである。芝などの草では約15センチ、普通の草花は約30センチ、低木で約60センチの深さまで根が広がっているそうだ。

 耕した土を「作土」というが、稲や野菜を作る際にはこの作土をどのくらいの深さにすればよいか目安がある。水田なら15センチ以上、葉もの野菜などであれば20~25センチ以上、根菜類なら30センチ以上である。屋上緑化の際にも、この厚さがあれば良いようだ。土が少ないとジャガイモなどは十分な大きさに育たないといった問題が出てくるから、屋上庭園の計画段階から何を植えるか考えておくことがとても大切だ。

・・・


 さて、様々な植物を育てようとするなら土は多い方が良いのであるが、それに耐えるようにビルの屋上を頑丈にするにはコンクリートをたくさん使わなければならない。これでは地球温暖化に反するのではないか?との心配が出てくる。石灰岩からコンクリートを1トン作ると、二酸化炭素が1トン発生する。

 当初、東京都では、屋上には二酸化炭素をたくさん吸収する樹木を植えることを推奨していた。しかしその後、少量の土で育つ草を植えても屋上緑化されたビルであると認めることにした。地上であれば、土があるのは当然のことと考えがちであるが、屋上では「土」が大問題になっている。(つづく)


東京の空中庭園 Vol.3
東京の空中庭園 Vol.1

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