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ナチュラルハウスを創る Vol.1 ~日本人オーナー・ビルダーがテキサス州で面した現実 ~

アメリカで自宅をセルフビルドした日本人の物語

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小井沼有嗣 アメリカ 小井沼有嗣 アメリカ
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2006-08-06
 

オーナー・ビルダー

 アメリカ英語には「オーナー・ビルダー」(owner-builder)という言葉があります。 自分で自分の土地に家を建てる人のことです。 大都市の外に出てしまうと開拓者文化が根強く残っているアメリカ。

  「素人が自分で家を建てるなんてそんな大それたことを」とお考えになる日本人も多いかと思いますが、オーナー・ビルダーに出会うことは、田舎に行けばそんなに難しいことではありません。

 日本では専門家を信頼する文化があり、プロとアマチュアの違いが非常にはっきりとしていることが多いですが、こちらは頼りになるのは自分だけ(各業者のサービスが悪いせいもあるのでしょうが)という風潮が強く、率先して何でも自分でやってみる姿勢を高く評価するわけです。

 大工作業等はその典型で、建築用具、材料を売っている巨大チェーン店、Home Depotが雑貨店Wal-Martに次ぐ第二の実績をあげていることからもその傾向の強さを知ることができます。

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 さて、僕は東京生まれの都会育ち。12歳まで関東で過ごした後、父の転勤でブラジル・サンパウロへ。「南米のニューヨーク」とも言うべきサンパウロは、ブラジルの大自然や発展途上国的なイメージとは似ても似つかぬ巨大都市。

 18歳の時には、アメリカ中西部、カナダ国境に位置するミネソタ州の小さな私立大学へ行きましたが、そこでは周りから隔離された全寮制という環境で、自分がどんなに都会から離れた田舎町にいるのか、ピンと来ない生活でした。在学中に知り合ったウィスコンシン州出身の女性と卒業後結婚し、1997年に今住んでいるテキサス州オースティンへ引っ越してきました。

 州都であるオースティンは近くにあるヒューストン、ダラスのおかげで知名度はあまり高くありませんが、近辺の町も含めると人口は200万人以上。アメリカ全国でも有数の巨大大学、テキサス州立大学オースティン・キャンパスがあり、住民の教育水準も高く、それをベースにしたIT産業が盛んな町。

 オースティンへ移り住んだのは、ただ単にミネソタが寒かったということもありますが、大きすぎない町で豊かな文化があり、またミュージシャン志望の僕にとってはオースティンの有名なライブ・シーンも魅力であったわけです。日本人としては恥ずかしいほど不器用な僕なんですが、この時にはまさか自分がこの手で家を建てることになるなど夢にも思いませんでした。 

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 引っ越してから2年ほどたった頃、妻がアパートから出て家を買おうと提案しました。 家賃にお金をつぎ込むより、自分の資産になる物件に投資した方が効率がいいというのは、こちらでは一般的な考えです。

 テキサス州は土地は広大にあり物件も安いのですが、オースティンは90年代、IT産業が急激に成長し地価も高騰していました。 街中に我々の手の届く家は見つかりにくいということもありましたし、また田舎町育ちの妻はもっと自然の身近でのんびりとした環境でくらしたいという願望がありました。

 でも、彼女が「土地を買って自分達で家を建てよう」と言い出した時には僕もびっくり。 「そんなことができるわけがない」と猛反対しました。

ナチュラルハウスを建てる

 その時に妻が展開した理論はこうでした。 都会の喧騒は人間にとって不自然な生活環境であり、また一般の家は環境や人間の健康への影響を度外視し、効率最優先の建て方をするものが多い。 だから自分達で我々のライフスタイルにあった家をデザインし、自分で建てることによってコストを抑える。

 ローンは一般的には30年ローンを組むのですが、30年もかけなければならないほどの金額を借り、職業人生の大半をその返済にかけるよりはお金がかからず、なおかつ自分達に良い環境をつくり、大金を稼ぐ必要のない生活をしよう。 家の建築はやればできないことではないし、そのノウハウを習うことはできるから、というものでした。 

 彼女のナチュラル・ハウスとの出会いは大学在学中、図書館でストローベイル・ハウス(straw bale house)の本を見かけた時でした。 専門的訓練がなくても建てられ、また土、砂、藁といった自然な材料を生かして建てるストローベイル・ハウスに魅せられた妻はその後手当たり次第関連文書を読み漁るようになり、最終的にはストローベイルよりももっとさらに単純、安価な手法であるコブ(cob)という建て方で家を建てたいという夢を抱くようになったのです。

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 こうして議論を続ける中、彼女の熱意と理論も僕に浸透してきまして、それなら試しにワークショップを受けてみようということになり、二人で西海岸、オレゴン州で一週間「コブの基本」というワークショップを受けてみることにしました。 これを体験してみて、なおかつこれは二人でできると実感した時には、物件を探してみようと決めたのです。 2000年春のことです。 これが様々なオルタナティブ思想の世界へ踏み出す一歩になりました。(つづく)


ナチュラルハウスを創る Vol.4~土地を探す ~
ナチュラルハウスを創る Vol.14~夢の終わり ~
ナチュラルハウスを創る Vol.13 ~二軒目の小屋 ~
ナチュラルハウスを創る Vol.12 ~子育てと生活環境 ~
ナチュラルハウスを創る Vol.11 ~人生は待ってくれない ~
ナチュラルハウスを創る Vol.10 ~ついに屋根が ~
ナチュラルハウスを創る Vol.9 ~ないものづくしでも ~
ナチュラルハウスを創る Vol.8 ~屋根の枠組み~
ナチュラルハウスを創る Vol.7 ~コブの壁 ~
ナチュラルハウスを創る Vol.6 ~土台~
ナチュラルハウスを創る Vol.5 ~家の置き場所 ~
ナチュラルハウスを創る Vol.3 ~コブハウスとは ~
ナチュラルハウスを創る Vol.2 ~コブハウス・ワークショップでの体験 ~

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