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ナチュラルハウスを創る Vol.9 ~ないものづくしでも ~

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小井沼有嗣 アメリカ
day
2007-06-17
 

[友人とソーラーパネルを組み立てているところ]

 2002年夏、建築を始めてから1年たちましたが、コブの小屋は完成には、まだまだ遠い状態でした。 この時点で完成していたのは土台と壁の大半(といっても土の表面はむき出し、上の方は未完成で屋根付近は穴だらけ)、そして屋根の枠組みだけでした。 が、土地のローンを返済しながら家賃を払うのも予算的にもう限界。 我々はできかけの家への引越しを強行することにしました。 片道40分ドライブして作業に通うのも大変でしたし、しばらくはキャンプ的な生活になっても、土地に住んでしまえば作業もはかどると考えたのです。

 話が前後しますが、妻の家族は古いキャンピング・カーを一台所有していました。 大型車の後ろに引いて移動するタイプで、小さいながら流しもガス・レンジもありましたので、我々は春先に妻の田舎へ行ってそれを借りてきていました。 週末に泊まるところがあれば、もっと作業もはかどるだろうと考えたのです。 

 家自体には屋根もなければ水道も電気もない状態だったので、我々が実際に引っ越したのはこのキャンピング・カーの中です。 倉庫を借りて持ち物の大半を保管し、最低限のものを持って2002年7月初めにアパートを引き払いました。 

 ここから数ヶ月は完全にサバイバル的な生活になりました。 トイレは建築用のポータプル・トイレを借りて用を足しました。 冷蔵庫の代わりに大きなキャンプ用の冷凍庫を買って、毎日一回氷を買いに出ました。 テキサス州の夏は、日がとても長いので早寝早起きすれば電灯がなくてもかなり過ごせます。 もちろん非常に暑いですがエアコンなどありません。

 水道は家の中にはひいてませんでしたが、外に一つ蛇口を設置し、長いホースでキャンピング・カーの中へ引きました。 行水も、これまたキャンプ用のソーラー・シャワー・バッグに水をためてすませました。 これは片面が透明、片面が黒の厚いプラスチックのバッグで、日中は日にさらしておいて暖め、木の枝などにかけてあびます。 テキサスの日差しはとても強いので気をつけないと熱すぎることも!

 洗濯は小さな手動の洗濯機を購入しました。 手洗いよりは速いという類のものでした。毎朝起きて洗濯するのが僕の日課になりました。

+++


 もちろん家財道具一式は小さなキャンピング・カーにはおさまりませんでしたので、できかけの家やテントも物置として使用しなければなりませんでしたが、どちらも防水されていないので、雨が降る度にあちらこちらで物が駄目になってしまい、非常にストレスがたまりました。 が、「住めば都」とはよくいったもので、何もない生活も慣れてしまうと意外と楽しい面もあり、何もなくても人は生きられるものだと痛感しました。

[屋外シャワー室] 

 さて、もちろん引っ越したのはサバイバル生活を楽しむだけでなく、建築に精を出すためでした。 でも実際に住むとなると現実の生活に必要なものを確保しなければならないので、我々がまず集中したのは電気と水道でした。

 我々の土地には電線が入ってなかったので、もともと太陽光発電に関心のあった我々は従来の電気をつけるべきか、それとも太陽光発電の機材に投資するべきか大いに迷いました。 色々なリサーチをしましたが、現代のアメリカの電気製品はいかにエネルギーを無駄に消費するかを知り愕然としました。 資源費が日本と比べて格安のアメリカでは、何でも大きく、強力であればいいと考える傾向があるらしく、電気コンロ、乾燥機、エアコンなど何でも我々の小さな家には不必要に強力すぎ、巨大すぎであることが多く、家具揃えは難航しました。

 結局我々は太陽光発電に投資することにし、毎時間110ワットを出力するパネルを4枚購入、関連の機材(電気を貯めておくための巨大電池など)もオンラインで特注しました。 これらの配線や設置は理論的には単純でしたので、機材が着いたあとは作業はトントン拍子に進み、ついに9月のある日、我が家に電気が付きました。

 毎時間440ワットの出力ができるわけですが、これは現代の生活ではごく微量なもので、例えば髪の毛を乾かすドライヤーなどは一時間つけておくと1000から1500ワットかかりますし(そんなに長い時間使うものではないですが)、電子レンジや電気ヒーターなど、とにかく温度に関する機材は使えなくなりました。

 唯一の例外は冷蔵庫。 普通サイズの冷蔵庫は電力消費が大きすぎるので小さなものを買ってきました。 ところが誤算だったのは、本を読むと中央テキサスは夏には毎日14時間ほどの日光が見込めるはずだと書いてあるのですが、現実には朝方は湿気が非常に高く、曇っていることが多く、実際に日が差すのは朝10時ごろのことが多いため、電気の量がしばしば不足したことです。そのため時々冷蔵庫をオフにして氷を買いに出なければならないことがありました。 またエアコンは一時間2000ワット以上もかかるのでもちろん駄目。 でも家が完成したら断熱性の強いコブの壁だから住み心地はよくなるだろうというのが我々の見積もりでした。

+++


 ところが10月に入ると、その年は異例な寒さが続き、薄い布の壁で風通しのいいキャンピング・カーでは寒すぎることになりました。 うちの土地は田舎なので天然ガスが配給されません。 曇りや雨続きなので電気も発電できませんし、市販のプロパンのタンクは小さく、一日中暖房をつけるのは消費が大きすぎます。 そこで我々は急遽、鉄の暖炉を購入して設置し、煙突をつけて薪を買って、それで家の中を暖めることにしました。

 でもまだ北側の壁の上には大きな穴が開いていて北風が吹き込んでくる状態です。 屋根もついてないのでせっかく暖めても熱が全部逃げてしまいます。 暖炉のすぐ隣に座っていないと寒くて何もできない状態が長く続きました。 基本的には冬は厳しくないテキサスですから、保温性の高いコブの家の中では冬は全く問題ないだろうと考えていたのですが、この年はさすがに苦労しました。

[急遽買ってきた鉄製の暖炉]

 水道は、じきにつながりましたが、湯沸かし器がないので(アメリカで一般に使われているのは大型のタンクに水をためてガスか電気で暖めておくという古典的なスタイルなので、小さな我が家には置き場所がない)お風呂にも入れません。 もちろん太陽で水を暖めるのはこの季節では不可能ですから、今度はこれまた家畜用の鉄の水桶を買ってきてレンガの上に置き、水を入れて下に薪で火を焚きました。 土でできている家の中で不用意にこんな大量な水を扱えませんから、屋外でです。

 草原が火事にならないよう気をつけながらお風呂を暖めるんですが、大量のお水ですから時間がかかります。 一回風呂に入るのに3時間くらいも火を焚かなければいけないことも少なくなかったです。 が、真っ暗な大草原の中、底の熱い風呂に入って(底は熱すぎるので木材を沈めてその上に座りました)、満点の夜空を眺めるのは最高の気分で、そこまでたどりつく苦労を一気に癒してくれるすばらしい体験でした。

[初めてお風呂を沸かしているところ。 寒い雨の日でした]

[3時間後、沸いた風呂に入っているところ。 後方に布でカバーしてある家の屋根が見えます]

 こうして我々は、こつこつと作業をしながら最初の夏と冬を「ないないづくし」の環境で過ごしました。 それは非常に厳しい体験でしたが、生活は少しずつ向上していきましたし、またそういう環境でしっかり生き延びられたということは、後に大きな自信にもなりました。(つづく)


ナチュラルハウスを創る Vol.11 ~人生は待ってくれない ~
ナチュラルハウスを創る Vol.10 ~ついに屋根が ~
ナチュラルハウスを創る Vol.8 ~屋根の枠組み~
ナチュラルハウスを創る Vol.7 ~コブの壁 ~
ナチュラルハウスを創る Vol.6 ~土台~
ナチュラルハウスを創る Vol.5 ~家の置き場所 ~
ナチュラルハウスを創る Vol.3 ~コブハウスとは ~
ナチュラルハウスを創る Vol.2 ~コブハウス・ワークショップでの体験 ~
ナチュラルハウスを創る Vol.1 ~日本人オーナー・ビルダーがテキサス州で面した現実 ~

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