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コブハウス作りのワークショップに参加する
さて、実際に家を建てるのに本で読んだ知識だけでは不足ですから、2000年5月、西海岸オレゴン州でコブ・ワークショップに参加し、実際にコブのやり方を体験してみることにしました。
主催者はコブ・コテージ・カンパニーという小さな会社で、実際に教えてくれたのはイアント・エバンズとリンダ・スマイリーという老夫妻。 アメリカではコブという手法の第一人者である二人で、著書には、その道で必須となっているものもあります。
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イアントはイギリス人で、実際に建築家として長年働いていたそうですが、その業界で学んだ知識はナチュラル・ハウスのデザインや構築には邪魔になることの方が多く、身についた悪癖を捨て去るのにいかに時間がかかったかという話をしていました。
彼は構想も大きく、30年かけて建築業界に新たな流れをつくると力説していました。
リンダの方はアメリカ人で、もともとは心理学やカウンセリングなどの方面の仕事に就いていたようで、コブは丸みのあるスペースをつくるのに最適だと考え、それが人間の精神に及ぼす好影響というものを研究していました。
土台や壁作りなど大きなテーマを教えるイアントに対し、リンダの方は最終的な壁を塗る作業とか、また彫刻のようなモチーフを取り入れたりと、コブを芸術的な面を強調していました。
さて、オレゴン州の山奥、高層ビルほどの高さもある木々が生えている原始林の中でワークショップは行われました。
参加したのは15人ほどで、テキサス州からやってきた我々の他にもジョージア州とか、カナダから参加していた人もいました。
イアントとリンダの名声もありますが、遠くから来ている人も多いことは、この手法への情報が不足しているという現実も指しているといえます。
ワークショップにて
8日間のワークショップで、朝は5時ごろ起床。 まず小一時間ほど静かに個人作業でコブをつくることから始め、その後朝食。 午前中は建築作業と講義に費やし、昼食後2時間ほど休憩して、夕食前にもう数時間作業をするのが主な日程でした。
参加者はそれぞれテントを持参し、シャワーの代わりに近くの湖で行水といった極めて原始的な環境での生活でした。
食事は主催者の方でつくってくれましたが、基本的には菜食主義。 とはいっても豆類をふんだんに使ったボリュームのある食事で、一日中重労働している我々がエネルギーを補給するには申し分ないものでした。
実際の作業はイアントとリンダの土地に45平方メートルほどの建築用具用の小屋を建てるというプロジェクトでした。
他のワークショップでは、ただ教えるという目的のため、実際には使われることのない壁や建物をつくることもあると聞きましたので、本当に実用するためのプロジェクトに参加できたのは幸運でした。
我々が着いた時点では土台がもうほぼ完成しており、いよいよ壁作りをする準備ができていました。
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このワークショップへ行くまで本物のコブをまだ見たことがなかった我々にとって、その道の権威である二人、またその二人の住んでいる小屋を見学できるのは、この手法を学ぶにおいて、またとない機会でした。
イアントとリンダは講義と実践をうまくミックスし、実際の経験に基づいたコツを体で覚えさせるという徹底した、ある意味では厳しいアプローチをとっていました。
たった8日間の滞在であったにも関わらず、最後には参加者にみな自分もコブで建物をつくれるという自信を植え付けたその手腕はさすがであるといわざるをえません。 また参加者の間でも非常に有意義な会話ができ、一週間の重労働を潜り抜けた後には大きな連帯感が生まれました。
最終的には建物は壁がほぼ完成し、屋根にとりかかる準備ができつつあるというところまでこぎつけました。
15人での作業とはいえ、結構早いペースのように感じられました。 最初はただ土台だったところに一週間で壁がたち、建物らしいものになったのですから。 というわけでコブというやり方で壁をつくる技術を身につけ、また土台や屋根についてもプランを通じてノウハウを学び、我々は参加した目的を達成することができました。
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しかし、技術は身についたけれど、その体験は必ずしもいいものだけではありませんでした。イアントとリンダが参加者の前で毎日のように口論し、何度もやったことのあるはずのワークショップの運営について全く方針が一致していなかったこと。 他にも例えば大きな音がして危険性もある現代の建築用具(ドリルや電ノコといった小物も全て含めて)は使うべきでないとか、トイレが地面に穴を掘ったものであったこととか、早朝でかなり寒いにも関わらず裸足で作業を強いたことなど建築の作業内外でルールを強要しました。我々は建築技術を学ぶだけではなく、イアントとリンダの理想に基づいた閉鎖的ともとれなくもない生活の方針をも同時に学ばされたのです。 これはずっと後になって自分たちの家を建築する時に意外な障害となって現れてきました。
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というわけで残念ながら他の人にも手放しでお勧めするという体験ではないのですが、とにかくこのやり方で自分たちも家が建てられると確信した我ら夫婦は、オースティンに帰りその実行にとりかかることにしました 。(つづく)
ナチュラルハウスを創る Vol.4~土地を探す ~
ナチュラルハウスを創る Vol.14~夢の終わり ~
ナチュラルハウスを創る Vol.13 ~二軒目の小屋 ~
ナチュラルハウスを創る Vol.12 ~子育てと生活環境 ~
ナチュラルハウスを創る Vol.11 ~人生は待ってくれない ~
ナチュラルハウスを創る Vol.10 ~ついに屋根が ~
ナチュラルハウスを創る Vol.9 ~ないものづくしでも ~
ナチュラルハウスを創る Vol.8 ~屋根の枠組み~
ナチュラルハウスを創る Vol.7 ~コブの壁 ~
ナチュラルハウスを創る Vol.6 ~土台~
ナチュラルハウスを創る Vol.5 ~家の置き場所 ~
ナチュラルハウスを創る Vol.3 ~コブハウスとは ~
ナチュラルハウスを創る Vol.1 ~日本人オーナー・ビルダーがテキサス州で面した現実 ~
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