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ナチュラルハウスを創る Vol.12 ~子育てと生活環境 ~

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小井沼有嗣 アメリカ
day
2007-10-18
 

 12月に子供が生まれ、その直後の火事も大事に至らずにすんだ後、2004年の前半は、赤ん坊の世話に追われて過ごしました。 新生児を抱えて、建築どころかその日その日を生き延びるのが精一杯でした。建てかけの小屋での生活環境は決して良くはありませんでしたが、ひたすら耐えしのぐ感じでした。それでも夏頃になり、睡眠不足や新しい生活パターンにも慣れてくると、「子育て」という新しい作業のためにも、この環境を改善しようと、ということになりました。

 家の建築と同じく、子育ても理想と現実とは違うもので、新しい命が必要とするものを提供するために、我々は様々な意味で妥協し始めました。 その最たるものは電気でした。

 ここまで2年間、我々は太陽光発電で全ての電力をまかなってきました。しかし生活に必要なだけの発電はできず、電気は我々の悩みの種でした。 第一の誤算は、資料で調べたこの地方の日照時間と、実際にお日さまの照っている時間が違っていたということ。

 例えば、本によれば、ある月には9時間太陽が照っているはずなのですが、オースティン東の地域は、メキシコ湾から吹く湿度の高い風が、西の丘陵地帯から吹く乾いた風とぶつかり、毎朝10時くらいまで曇っていました。 日が高くなるにつれて晴れるのですが、日光が実際にソーラー・パネルに当たる時間は本に書いてあるより2時間も少ないのです。

 自家発電だけで生活するために、電気器具は極力減らしていた我々ですが、電気の大半を費やす小さな冷蔵庫をオンにしておくことができない日も多く、その度に氷を買ってキャンプ用の冷凍庫に入れ、そこに食べ物を移さなければなりませんでした。 冷暖房は膨大な電力を消費するので使えず、暑い夏は扇風機だけで過ごし、冬は薪をストーブに入れて過ごしていましたが、さすがにこの夏は、ただでさえ大人より体温が高い赤ん坊には酷だということになりました。

 他にも電気が自由に使えない不便さがつのり、ついに我々は一般の電力会社から電気を導入することにしました。 しばらくは自家発電と併用しましたが、自家発電システムの電池の老朽化(もともと3年から5年で買い替える)にともない、自家発電の使用頻度は減っていきました。

 次に改善すべきは床でした。 二階(屋根裏)は木の板を並べた床でしたが、一階は砂利がむき出しでした。 コブと同じ手法で床を埋めた後で、表面の仕上げとして防水効果のあるlinseed oil(和英辞典によると亜麻仁油(あまにゆ)という)を何重にも塗るのが我々のプランでしたが、この年にできたのは床を埋めることだけで、その上に薄い絨毯を敷いて過ごしていました。

[薄い絨毯を、壁と同じ材質の床上に敷いている]

 秋になり寒くなり始めると、今度は暖炉を新しくすべきことに気づきました。 それまで安くて小さい鉄製のストーブを、直接床に置いていたのですが、娘がハイハイするころになると、どうやってあの子が熱いストーブに近づかないようにするのか、という問題が生じたのです。 柵で囲むと柵が熱くなりますし、熱くならないほど距離をおくスペースもありません。 コブで土台を作り、その上に置くことも考えましたが、もともと効率の悪いストーブだし(最初の年の予想外の冷え込みで慌てて買ったので)、といって本格的なものはお金がかかるし、結局はコブで暖炉を作ることになりました。

 コブは燃えないし、熱を保てるのでオーブンなどに頻繁に活用されます。 暖炉としては、専用のレンガを、熱を前方に反射するよう配置して家の中を暖めます。 時間はかかる作業ですが、安価に能率良く家を暖める暖炉ができます。

[最初のストーブ]

[できかけのコブの暖炉。 煙突をつけるととりあえず使用可能になる。右上に最初の暖炉で使っていた煙突用の穴がある。壁に穴を開けたり、穴をふさいだりできるがコブの利点]

[煙突を付けているところ]

[使用可能になった暖炉に初めて火を入れるところ。 壁の藁が燃えないよう暖炉の壁は粘土と砂を混ぜたもので塗ってある]

 肝心の使い心地ですが、コブは一旦冷えてしまうとなかなか暖まりません。 が、一度暖まると今度は長時間、暖かみを提供しくれます。 なので家に長時間いて火を燃やし続けると素晴らしいのですが、出入りの激しい日は頼るのは難しく、小型の電気ヒーターも買ってきて併用しました。といっても暖炉の火の放つ自然で乾いた熱気は非常に心地よく、薪はいくらでも転がっていたので使用頻度が低かったわけでは決してありませんでした。

 2004年は電気、壁、暖房と、主に子供を想っての生活環境の改善が最優先で、建築自体は停滞したままでした。 高いお金を投資して導入した自家発電を放棄することは非常に残念でしたが、自分たちの理想のために子供に犠牲を強いることはできませんでした。 と言っても、お湯が出なかったり風呂に入るのが困難であったり(薪を焚いて暖めていたので)、問題が山積みで、この先大きくなる子供の必要をどうやって満たすのか、我々の悩みは一向に小さくなる気配がありませんでした。


ナチュラルハウスを創る Vol.14~夢の終わり ~
ナチュラルハウスを創る Vol.13 ~二軒目の小屋 ~
ナチュラルハウスを創る Vol.11 ~人生は待ってくれない ~
ナチュラルハウスを創る Vol.10 ~ついに屋根が ~
ナチュラルハウスを創る Vol.9 ~ないものづくしでも ~
ナチュラルハウスを創る Vol.8 ~屋根の枠組み~
ナチュラルハウスを創る Vol.7 ~コブの壁 ~
ナチュラルハウスを創る Vol.6 ~土台~
ナチュラルハウスを創る Vol.5 ~家の置き場所 ~
ナチュラルハウスを創る Vol.3 ~コブハウスとは ~
ナチュラルハウスを創る Vol.2 ~コブハウス・ワークショップでの体験 ~
ナチュラルハウスを創る Vol.1 ~日本人オーナー・ビルダーがテキサス州で面した現実 ~

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