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家の置き場所も決まり、勇んで建築を開始したのは2001年5月。 テキサス州ではもうだいぶ暑くなる時期でした。
寒いアメリカ北部と違い、地面を深く掘って(地下室をつくって)土台を建てる必要のないテキサス州では、長方形の型にコンクリートを流し入れるコンクリート・スラブと呼ばれる手法が主ですが、もちろん大規模な機材と専門家を要する作業ですし、環境にやさしい建物を建てるという目的には沿いません。ですから、我らは先のワークショップで教わったもっと古典的な、手で岩を積む土台にすることにしました。
大きな岩を一個ずつ手で積むのは時間もかかるし非常に危険な作業で大きな建物には全く向いていませんが、我々の家は小さなものなので充分やれると考えていましたし、やり方は簡単なので明確に理解していました。
まずは幅45センチ、深さ60センチ程の溝を家の輪郭に沿って掘ります。 ここで注意するのは、どんな土地でも完璧に平らであることは少ないので、全体的にどっちの方向に緩やかに傾斜しているのかを見極めて、土台の溝の底もそれに沿うかそれ以上に傾斜するようにすること。これは土台の下に入った水が溜まることなく流れ出るようにするためで、一番低い部分から家の外側にもっと深い穴を掘って水が家の下から出られるようにします。
穴が掘れたら底15センチくらいは大粒の砂利で埋め、その上に大きなプラスチックのチューブを入れます。 このチューブには穴が幾つも開いていて、中に水が流れ込めるようになっています。 このチューブの中を通って水が最低部まで流れるわけです。 その上にさらに砂利を入れて地面と同じくらいの高さまで埋めます。
 [土台掘り。 家の輪郭が見えてきたところ。] と書くと簡単に聞こえますが、我々はこれを全部シャベルを手に自分たちでやったのでかなりの重労働でした。 うちの土地は粘土質が高く、暑い夏は地面が乾いていて非常に硬かったのです。 作業を始めたのが5月でテキサス州でも一番過酷な季節だったことも災いして、我々はすぐに一日中掘り続けることは不可能であることを体験しました。
なので週末になると朝暗いうちに起きて土地まで片道40分をドライブし、朝の10時くらいまで作業したら打ち切って家に帰り休むという具合でした。 後で考えると小型のパワーショベルを借りるなり業者を雇うなり他に手立ては幾らでもあったのですが、ワークショップで全て手作りでやる手法を叩き込まれた当時の我々にとってはそれは邪道であるように感じ、考慮しませんでした。結局この作業が済んで岩を積む段階までこぎりつけたのは8月ころでした。
 [黒いプラスチックのチューブを入れているところ] bigImage=210] さて、先のワークショップでは近くに原始林や山がいっぱいあり、ちょっと地崩れしているところには幾らでも大きな岩が発掘できたので、トラックでそういうところへ通っては岩を調達していました。 が、平地のテキサスではそうはいきません。 他にも色々安価に岩を調達する手段はありましたが、どれも「金を払わない」イコール「時間をかける」アイデアばかりだったので、ここまですでに三ヶ月を要していた我々はお金を出して業者から岩を大量に届けてもらうことにしました。
 [最初の層の岩を並べているところ。] 土台に使う岩も、どれでもいいわけではなく、水に強く積みやすい種類の岩でなければいけません。 我々が選んだテキサスボーンロックという岩は比較的長方形というか平らでしたけど人為的なプロセスでそうなったのではなく自然な感じでいい岩でした。 これを1トン110ドルで買ったのですが、経験のない我々には土台にどれくらいの岩が必要なのかわかりません。 最初は4.5トン分届けてもらいました。
これをダンプトラックで届けてもらい、建築地のすぐ横に積んで一つ一つやはり我々が手で移動して積み上げることにしました。 ここで我々がすぐに思い知ったのは岩一つ一つはとても重く、とても持って運べるものではないということ。 そこで岩を持ち上げるのではなく、転がして動かすことにしました。
 [最初の層の岩を並べているところ。] さて、岩を積み重ねるといっても、この上に家が立つ土台ですから安定していなければいけません。 安定とはどういうことかというと、積んだ岩の上に乗ってみて色々足で重みを乗せ、どう動いても岩が全くグラグラしない状態であることです。 それから岩と岩の間にコンクリートを流し込み、岩が動かないよう固定するのです。
比較的平らといっても正確に平らでない岩を積み重ねるのも実は大変な作業で、最初は適した岩を選ぶだけでかなりの時間を要しました。 最初の数個の岩を積み重ねるだけに一週末費やしてしまい、その作業の遅さに呆然としたものです。 ですが、次第にコツを掴むにつれて作業は速くなっていきました。
岩を積む作業は立体パズル的な要素もあり、コツを掴んでからは楽しくないこともなかったのですが、この作業が終了していよいよ壁作りにとりかかるころにはすでに11月になっていました。 量にして軽く10トン以上の岩を全て2人の手で転がし、積んだのですからその労力は相当なものでした。
最初始めたころは1シーズンで終わると思っていた家の建築が、半年分の重労働の後で(とはいっても週末だけでしたが)、ようやく土台が終わるところまでたどり着いたわけですから予想と現実のギャップは激しいものでした。 でも次の壁作りのプロセスでは我々もワークショップを開催して他の人と一緒にやろうと計画していましたし、もっと楽しく速く進むだろうと思っていた我々は勇んで壁作りにとりかかることにしました。(つづく)
 [完成した土台のクローズアップ。]
ナチュラルハウスを創る Vol.4~土地を探す ~
ナチュラルハウスを創る Vol.8 ~屋根の枠組み~
ナチュラルハウスを創る Vol.7 ~コブの壁 ~
ナチュラルハウスを創る Vol.5 ~家の置き場所 ~
ナチュラルハウスを創る Vol.3 ~コブハウスとは ~
ナチュラルハウスを創る Vol.2 ~コブハウス・ワークショップでの体験 ~
ナチュラルハウスを創る Vol.1 ~日本人オーナー・ビルダーがテキサス州で面した現実 ~
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