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オーストラリアのコミュニティバンク 

コミュニティセクターに投資する

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飯野陽子 オーストラリア
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2004-08-15
 

オーストラリアにおけるコミュニティバンクの現状

 オーストラリアで80年代後半以降、金融業界に導入された規制緩和により、大手4大銀行は大幅なリストラを余儀なくされ、採算性の取れない地方の小さなコミュニティにおけるサービスは次々と打ち切られていった。1993年から2000年にかけて2060もの金融機関の支店が閉鎖されたというが、全体的に見て7年間で29%の減少である。

 地方の小さなコミュニティにおいて地域経済の中心である銀行の閉鎖が及ぼす地域生活への打撃は計り知れないものであった。そんなコミュニティにおける金融サービスの必要性に応えるため、ビクトリア州の小さな地方銀行であったベンディゴバンクは1998年以来コミュニティバンクのイニシアチブをとってきた。

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 コミュニティバンクはベンディゴバンクのフランチャイズで、各地域の市民が出資し、設立・経営する。自己資本金やその他の経営に必要な建物、通信機器などの設備及びスタッフは各地域の市民が提供し、ベンディゴバンクが銀行業務のノウハウを提供する。銀行の利益の半分はそのままコミュニティバンクの利益となり、地域のニーズに従って再投資されていく。

 ここ5年間でオープンした最初の44のコミュニティバンク支店はいずれも月々の利益を生み出しており、支店によっては月2万ドルの利益を生み出している。コミュニティバンク開設後、地域ビジネスの売り上げが最高25%増えたなどコミュニティの活性化が報告されている。人口700人のコミュニティ、ヘンリーのコミュニティバンクでは地域に12万ドルの融資を行った。その他、コミュニティバンクの利益が地域社会に再投資された例として、アクセス向上のためATMの設置から、地域の大学や学校における奨学金制度、専門職の人たちを地方に呼び入れるためのビジネスセンター設立、老人のためにコミュニティバスの購買などがある。

 金融アナリストたちは、このコミュニティバンク・モデルはコストがかかりすぎて利益率が低い、支店経営によるサービスは時代遅れであり、このバンクモデルは地方の小さなコミュニティにしか需要を見出せないであろう、と指摘していたが、結果はそれに反して、コミュニティバンクをスタート以来ベンディゴバンクの株価は66%上昇、業界トップの成長率を誇っている。現在、オーストラリア各地、各都市におけるベンディゴ・バンクの250の支店のうち、100はコミュニティバンクである。

 ベンディゴバンクの急成長の理由に、次々と社会貢献サービスを打ち出している銀行の方針が消費者に受け入れられている、ということが挙げられるだろう。例えば、オーストラリアのオックスファム・コミュニティ・エイド・アブロード(CAA)のイニシアチブで80年代半ばに設立された倫理的投資ファンドと協同で、オーストラリア初の倫理的投資銀行口座を開設したり、住居における省エネ設備(太陽熱温水システム、断熱改修、節水)を購入に関するローンや環境に負担の少ないデザインの住宅建設の際には一般のローンのレートから0.5%ディスカウントして提供するグリーンローンのサービスを提供するなどしている。

 ベンディゴバンクのモットーは「カスタマーの成功とコミュニティの成功が、銀行の成功につながる」。ベンディゴバンクはただ単に銀行業務を行うだけでなく 、地域にリソースやスキルを提供し、パートナーシップを結ぶことによって互いの利益になることを目指している。2002年に、コミュニティセクターのNPO団体などを支援するためにCommunity 21 Ltd. (C21) とのジョイントベンチャーとしてスタートした"コミュニティセクター・バンキング"の試みもそのひとつである。


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