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カナダの女性起業家 ~世界の女性起業家シリーズvol.4~

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中澤理恵 カナダ
day
2005-11-20
 

カナダの女性起業家の特徴

 前半はカナダにおける女性起業家の歴史や制度を見てきたが、後半は起業の動機とその背景に焦点をあててみようと思う。それによって、カナダの女性をとりまく社会環境も見えてくるかもしれない。

 まずは起業の動機である。

 2000年にカナダのProfitマガジンが女性起業家100人を対象に行ったアンケート1では1位:「市場にビジネスチャンスを見出したため」、2位:「自立のため」、となった。2002年度の同アンケートでは1~2位同じ、3位:「起業することが長年の夢だったため」、4位:「売れる商品/サービスを開拓したため2」、であった。2004年にStatistics Canadaの発表した統計では3、起業家を含めた女性が「自営業」を選ぶ理由の第1位が「自立とコントロールのため」(30%強)、2位:「仕事と家庭のバランスのため」(13%)、3位:「柔軟な業務時間と、自己満足のため」(10%)となり、金銭的な動機は約5%にとどまった。

 こうした動機が挙がるのには、一体どんな背景があるのだろうか。

1.「市場にビジネスチャンスを見出した」「売れる商品/サービスを開拓した」

 この動機を聞くと、起業があたかも株式購入と同じくらい手軽なもののように感じられるが、実際のところカナダにおける起業手続きは比較的簡単(基本的には政府へのビジネス登録のみ、必要な場合はライセンス取得)である。資金面で大きな負担やリスクを負わずに起業することももちろんできる。また周りに起業家が多いこともあるだろう。歴史の浅いカナダでは、親族の誰かが起業していることは珍しくないように見える。こうした身近な人から起業のノウハウを学べることは大きい。

2.「自立」

非常に北米的でありながら「自立」と「起業」の関係を説明することは容易くない。個人的には「自立」はカナダの男女にとって「人となりを表す1つの重要な指標である」と考えている。つまり思いやりがある、腹黒いといった「人となり」の1つが「自立している」であり、「自立している」女性はより尊敬され信頼され、それが起業家であれば尚更である。そういう意味では「名誉欲のため」とも言い換えられるかもしれない。またカナダでは結婚から4年以内に離婚する夫婦が全体の25.7%(2002年)4 でピーク、また離婚後は女性が子供を育てる確率が約81%(2001年)5 という数字から、遅かれ早かれ経済的自立が必要になる人も多いと読み取れる。

3.「コントロール」

 この言葉の響きは強いが、言い換えれば人の下で働きたくない人達であり、国を問わず起業家にはこういうタイプが多いと思われる。

4.「起業することが長年の夢であった」

 数百年前にヨーロッパからカナダに降り立った人々の多くが「開拓者」であったため、その起業精神が今でも受け継がれているのかもしれない。それ以来世界各国からやってくる移民達についても同じである。

5.「仕事と家庭のバランス」

 カナダの大手銀行The Royal Bankの調べによると、カナダの5人中4人の女性起業家は既婚であり、半数以上に子供がいると言う6 。また2003年のProfitマガジンに載ったトップ100人の女性起業家のうち、40人には学校に通う子供がいた7 。

 カナダでは多くの女性が残業も含め、男性と同じだけ働く。例えば働く女性の86.4%は出産休暇をとっているが(2003年)8 、そのうちの80.8%は子供が1歳になる前に職場復帰している。その結果、彼らの子供はデイケア(託児所)に預けられることになる。この割合は年々増えており、2000年の時点で5歳以下の子供の53.2%がデイケアに入っている9 。

 こうした状況下で、意識的に家庭や生活と仕事とのバランスを保ちたい人が起業又は自営業を選ぶのだろう。その証拠に、Profitマガジンでの「仕事と生活のバランスを保っているか」という質問には82%(2004年)、73%(2005年)の女性起業家がイエスと答えている。

6.「柔軟な業務時間と自己満足」

 カナダではアルバイトは学生のものだという感覚が強く、社会人になってからもパートタイムで働く人というのは少ない。つまり独身も既婚も子供があっても月曜から金曜、9時から5時までという体制で働く場合が多いために、「柔軟な業務時間」が欲しいと思う人が出てくるのだろう。また「自己満足」は、起業や自営によって好きな仕事ができたり、好きに調整したりすることで満足を得られることを指しているのだろう。

 さて、ここまで見てきたカナダ人女性の起業動機だが、女性ならではというものがほとんど見当たらない、というのが私の印象である。男性の動機と並べても変わらないのではないか。特に1.「市場にビジネスチャンスを見出したから」というのは何とも勇ましい響きがある。そしてそんな女性起業家を男性は「かっこいい」と褒め称える-これは最近気づいたカナダの風潮である。こうしたリベラルな雰囲気も多くの女性が起業家する背景にあるはずだ。

*1.The Power of Women/Canada's Top100 Women Entrepreneur - ROFITguide.com
( http://www.profitguide.com/w100/2000/index.asp )
*2.Hear them roar - PROFITguide.com (http://www.profitguide.com/w100/2002/index.asp )
*3.Doing it for themselves -The Globe and Mail ( http://www.theglobeandmail.com/servlet/story/RTGAM.20051019.wxsrwomen19/
BNStory/specialSmallBusiness/ )
*4.Divorces -The Daily ( http://www.statcan.ca/Daily/English/040504/d040504a.htm )
*5.Census families in private households by family structure and presence of children, by province and territory (2001 Census)-Statistics Canada ( http://www40.statcan.ca/l01/cst01/famil54a.htm )
*6.Doing it for themselves -The Globe and Mail ( http://www.theglobeandmail.com/servlet/story/RTGAM.20051019.wxsrwomen19/
BNStory/specialSmallBusiness/ )
* 7.W100 Overview: Six Simple Rules -PROFITguide.com ( http://www.profitguide.com/w100/2004/article.asp?ID=1315 )
*8.Maternity leave - The Daily( http://www.statcan.ca/Daily/English/040622/d040622c.htm )
*9.Child Care - The Daily (http://www.statcan.ca/Daily/English/050207/d050207b.htm )


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