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誰もが自分らしく生きるために 第七話 ~若葉養護学校レポート その3 ~

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桜子 池田英臣 オーストラリア
day
2006-03-12
 

 若葉養護が開校して10年が経ち、卒業生も少しずつ社会へと巣立っていく中、今後どういった学校作りや教育内容を目指しているのかが、親のひとりとしても気になるところである。

―これから具体的にやろうと思われていることがありますか?

 「今まで長期期間で教育出来るメリットを生かして、職業教育(現在農園芸、家政、染色のコースがある)を試みてきましたが、生徒たちそれぞれの能力的な多様性があることも踏まえた上で、今後は作業内容を深める方向へ行きたいと思います。」

 「能力にバラつきがあるからと作業種を増やすのでなく、ひとつの作業によって生まれる製品の精度を上げるようにしたいのです。養護学校の生徒が作ったのだからとボランティアのつもりで購入してもらうのでなく、若葉の製品が良いから買うというようになればと思います」

 たしかに実際に社会に出て働くようになったとき、作業を行う技術や力量は高いに越したことはない。
 開校後10年間は、職業教育と平行して近隣地域の企業などへの働きかけや交流で、卒業後の生徒たちへの進路開拓に力を入れてきて、これは来年度からまた新たに取り組む課題だそうだ。

―しかし、やはり障害の重い人にとってかなり困難を伴うことだろうし、そのあたりの解決策はあるのでしょうか?

 「それにつきましては、作業についての教材提供を工夫しようと考えています。Aから直接Cに行けなくてもBというプロセスを踏めばCに行けるというような工夫を教師がするわけです。あとは就労すれば作業は出来て当たり前という判断がなされますが、学校では子どもに自信を持たせるために出来たことを十分に褒めるという、感性を育むことを心がけています」

 現在もその事例研究のために、群馬県の総合教育センター主催の講習などを先生方が受けているそうである。学校の先生というのは非常に忙しい職業ではあるが、若葉の先生方は授業意外にも往復5キロの登下校の引率、自力通学の生徒の駅までの送迎、寮への当直などさらに輪を掛けて多忙である。現在は20代の若い先生も多く、その若さで仕事をこなしている姿が印象的である。

―校長が若い先生方に指導されているポイントや期待されることは?

 「新任の教師であろうが10年目の教師であろうが、生徒やご父兄にとっては同じ先生です。自分が、子どもたちの幸せな人生のための通過点としての教育に携わっていることを忘れないでいて欲しいと思います。いつも謙虚さを大事にするように指導しています。ここにはコミュニケーションを取ることが少し難しい生徒もいますが、言葉でなくてもちゃんと通じるということを信じて諦めない教師になってもらいたいですね」

 たしかに障害を持っているような子どもたちは、人の本質を見抜く力を持っているように見受けられる場面が多い。ある意味彼らは私たちの鏡であるとも言える。それだけに誤魔化しが効かないし、おそらく普通に会社勤めをするよりはるかに大変で苦労されることも多いことと思う。しかし、教師という尊い職業を選ばれたからには、きっとそれすらもエネルギーに換えていかれるだろうと信じる。

 「私はもう引き返そうとしても引き返すことは出来ません。私立でもありますから定年もありませんし、体が続くまで情熱の灯を燃やし続ける覚悟です」

 小、中学校とずっと公立の学校へ通わせてきた中で一番残念に感じていたのは、どんなにすばらしい教育環境や先生に出会えたとしても、公立であるが故に異動のためにその体制が維持できないという憂き目に何度も遭ってきたことである。

 はるばる遠い群馬の地へ子どもを通わすことを決断したことは間違いではなかったと思う。子どもが幸せに生きていくための通過点としての学校。親もそのことを心して、よき連携を取っていかねばならないと感じた。 (了)


誰もが自分らしく生きるために 第六話 ~若葉養護学校レポート その2 ~
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