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イタリアの移民たち
ヨーロッパ大陸への玄関口として90年代初めから年々、多国籍の移民や難民が激増しているイタリア。アドリア海を隔ててイタリアと近隣する旧ユーゴ、東欧、アルバニアから、あるいはシチリア島から大陸の先端が見えるほどに近いアフリカの国々から、多くの難民や違法侵入者達がボートピープルとなって南イタリア、アドリア海側のペスカーラ、バーリ、ブリンディシやシチリア島へと渡ってくる。特に毎年、海が比較的穏やかな夏時期には、政変や内戦などにより経済的に困窮し、慢性的な貧困から逃れようとする人達は後をたたない。
彼らの殆どは不法を承知で、イタリアや他のヨーロッパの国々での可能性や仕事を求め、マフィアの手引きにより、小さな漁船程度の船に定員の4ー5倍も詰め込まれ危険を犯しながら渡ってくる。イタリアのニュースには、ボートピープルの遭難事故や移民、難民による犯罪、窃盗、人身売買といった事件が日常的に報道され、マイナスのイメージが先行しがちな一方で、現在のイタリア農業、産業は移民の力なしには立ち行かなくなって来ているのも事実だ。
外国人の地方参政権と代表議会
そういった状況のもと、イタリア国内で1、2年前から論議されはじめた「外国人の地方参政権」に先立ち、外国人の意見を地方議会に反映させようとする動きが広がっている。県単位としては02年のリミニに次いで昨年11月末、フィレンツェ市を中心に44の市町村を含む「フィレンツェ県」で、県議会に参加する「外国人代表」を選ぶための選挙が行われた。
この選挙で21人の外国人代表が選ばれ、県議会とは別の外国人議会を構成し、その中から選出された議長1人がフィレンツェ県議会に直接参加を許され、外国人の立場から意見を述べることができるというものだが、ただし、外国人代表者は、議会の中で自由に意見を述べることは出来るが、議決権はない。
今回のフィレンツェ県の外国人代表選挙に立候補したのは、多国籍住民で構成された4つのグループ、「一緒に!」「無国境」「世界は一つ」「平和、権利、民主主義」のほか、フィリピン人の「ヴィヴァ!フィリッピン」、中国人の「一緒に創る」、「トスカーナのなかのアルバニア」の3つの単一民族グループで、この中から立候補した110人の候補者とそれぞれの後援グループは、2ヶ月も前から各地集会や激励会などを開き、選挙に大きな期待をかけていた。
が、わずか4ヶ月という選挙準備期間の短さが最後まで影響し、情報不足、認識不足で投票率は15%と低迷した。また、議長一人だけが県議会に参加し、「移民代表者は県議会の中で発言することはできても投票権はない」などの規制があることから、「移民への理解を装う県のイメージ運動」との批判も聞かれている。が、しかし選ばれた外国人代表者たちの多くは今回の選挙は移民の権利獲得への初めの一歩になる。として希望に燃えている。
 [マラシ・バッ医師(左)]
この21人の外国人代表者のうち、議長として最有力候補者のアルバニア人医師マラシ・バッ氏は、今後の抱負として医師の立場から、移民の多くが建設現場や道路工事現場などで不正に働き、事故や怪我などの際には何の保証も充分な治療さえ受けられないという事実に対し、公正で正当な権利の獲得に力を入れたいという。また、基本的なこととして、情報の平等な普及や滞在許可書問題。また移民、難民の7割が問題を抱えていると言われる"家"の賃貸の手助け等を挙げてくれた。が、今回は、我々にとっても一般のイタリア人にとっても初めの一歩にすぎない。移民の権利獲得というより、我々が同じ人間としてここに存在する。という事実をイタリアの一般の人に知ってもらいたい。と答えてくれた。
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フィレンツェ県に居住する滞在許可書取得外国人約4万4000人の代表者議会は始まったばかり。これまではそれぞれの民族コミュニティーが情報交換をするということはなかったが、今回の選挙を切掛けに、コミュニティー同士での交流が始まっている。イタリア人へ向けてのアプローチはもとより、スリランカの民族舞踊、中国の正月行事、ブラジルや南アメリカのカーニバルなど、イタリアにいながら独自の伝統や文化を守る催しにお互いを招待したり、されたりしながら少しずつ相互理解に勤め初めているようだ。
今回選ばれた21人の代表者は全員が発展途上国とされる国の出身者。その内17人が同国人と結婚し、イタリア国籍を取得するつもりは無いという。15-25年以上もイタリアに暮らし、ネイティブなイタリア語を話すイタリア生まれの子どもの親になっても、それぞれの国籍も習慣をも持ち続けている。そういった事実も移民問題を考える上で考慮すべき必要不可欠な事柄だと思う。
移民問題がどう対処されているのか、同化か、それともコミュニティーとして受け容れられるべきか?などを課題として、今後、民族別に移民の状況をリポタージュし外国人会議の行方を追っていくつもりだ。
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