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身近にあるエスニックコミュニティ/東京インド人学校

日本初のインド人学校

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和田恭
day
2005-02-26
 

東京のインド人

 東京の地下鉄や、大手町や丸の内などのビジネス街でインド人の姿を見かけることが多くなってきた。一昔前なら、カレー屋などの飲食店勤務といったイメージが強かったけれど、最近よく眼にすることが多いのは、いかにも「ビジネスマン」といった雰囲気の、スーツ姿の彼らだ。

 インドのIT業界は、アメリカのシリコンバレーからアウトソーシングされる業務を、12時間という昼夜逆転した時差を利用して一夜のうちに仕上げて納品するオフショアビジネスによって驚異的に躍進した。

 アメリカとのビジネスにとって有利だった点として、この逆転した時差に加え、公用語であるヒンディー語の他に、準公用語の英語、その他憲法による21の公認言語、地方言語まで入れると1650以上の言語を持つ多言語国家であるインドが、実質的に英語を公用語として使っているということも見逃せない。また、高等教育を受けている人の割合が多いということも、魅力のひとつだろう。

 これらの特性を生かして、現在はアメリカ本土のコールセンター(クライアントに対しての電話サービスセンター)が、かなりのパーセンテージですでにインドに移行されているという。アメリカンアクセントを身に着け、ハンバーガーやハリウッドムービーに親しみながら懸命にアメリカ人になりきろうとするインド人の姿が報道されているのを目にしたことがある人も多いはずだ。

 このように、ITによって大きく変わろうとしているインドと、日本もまた無縁ではない。アメリカの後を追うようにして、IT関連業務をインドにアウトソースしている企業は増えている。最近都内に多く見かけるようになってきたインド人の多くは、IT関連技術者だ。

日本初のインド人学校

 そんな状況を受けて、2004年の8月に日本で初のインド人学校が江東区にできた。もともと江東区には、在日インド人が多く住んでいる。プログラマなどの職についている彼らは、基本的に母国から家族同伴で来日している。そのため、子供の教育には常に頭を悩ませていたという。というのは、数年の任期を終えた後インドに戻るため、インド式の、少なくとも英語での教育を受けることを希望している。

 しかし日本の義務教育では英語による授業を受けることがほぼ不可能。それでは欧米式の教育を受けることができるインターナショナル・スクールならどうかといえば、こちらは年間100万円以上の学費を支払う必要がある。

 この学校の設立者で、校長でもあるニルマル・ジェインさんは、30年以上日本に暮らし、現在もNHKや外務省などで勤務し、インターナショナルスクールでの学校運営の経験もあるというプロフェッショナルだ。年々増え続けるインド人技術者の子供たちが、インド式の教育を受けることができる学校を設立したいと考えていた彼女は、日本人の公認会計士などの協力も得て、昨年江東区に日本で初のインド人学校を設立した。

 ジェインさんがこの学校のために準備したのは、こじんまりとはしているが、5階建てのビル。フロア借りではなく、一棟すべてを使っているという。その1フロアにある校長室の一角で、この新しい試みについてジェインさんに聞いてみた。


――この学校の規模について教えてください。

「現在、生徒数は45人です。1年生から4年生までの小学校クラスがひとつに、幼稚園が2クラスです」

――この学校のカリキュラムは?

「完全にインドの学校と同じプログラムです。インドの文部省の認可も得ているので、ここで得た単位は帰国後の学校でも認めてもらえます。祝日も、インドのカレンダーどおりです」

――他のインターナショナル・スクールとの違いについて教えてください。

「英語で授業を行っているという点では同じですが、数学のレベルが違います。日本では小学生のときに九九を暗記しますが、インドでは20かける20まで暗記するんです。また、幼稚園からコンピュータの授業も行っています。また、ヒンディ語やインドの文化やお祭りについても教えています」」

――インドでは、お祭りは宗教的な要素が強いと思いますが、特定の宗教にこだわるということは?

「ここでお祝いするのはヒンドゥ、ムスリム、クリスチャンなど、さまざまな宗教のお祭りです。わたしたちはこのそれぞれのお祭りについて、なぜ、そしてどのようにして祝うのか、ということについて子供たちに教えます。でも、宗教そのものについて教えるということはしていません」

――学校がスタートして約半年経ちましたが、生徒の父母からの評判は?

「とてもいいですね。以前から江東区には、300以上のインド人ファミリーが住んでいるのですが、子供をこの学校に通わせるために引越ししてきた家族もあるくらいです。江東区以外に住んでいる人たちのあいだでも、着実に知名度が上がってきているという手ごたえを感じています」

――ここで教えている先生たちはインドから呼んだのですか?

「日本には、夫の日本赴任に伴って来日した、インドでの教職経験のある女性がたくさんいます。言葉の壁のため、日本で仕事に就くことができず、主婦として家にいるしかなかった彼女たちに教えてもらっています。彼女たちにとっても、社会で活躍するいいチャンスになっていると思います」

――地元の日本人住人との交流も行っているそうですが。

「餅つきやおみこしなどの行事には積極的に参加して、生徒に体験してもらっています。それに、1ヶ月にいちど、生徒の母親を対象に、折り紙や貝合わせなど日本文化を学ぶためのクラスを設けています。逆に、日本人を対象に英語のクラスも行っています」

――ということは、地域に根付きつつあるという手ごたえがあるわけですね。では、最後にジェインさんの今後の目標や展望について教えてください。

「今後は、スポーツ施設や理科室、家庭科実習室など、いわゆる"学校"に必要なすべての設備を備えた学校を作っていきたいと思います。幼稚園から高校まで、一貫した教育ができればいいですね。現在は、インドでミドルスクールと呼ばれている中学校レベルのクラスのために、新しいビルを探しているところです」

――本格的ですね。できるだけ早く実現されることを祈っています。ちなみに、この学校には日本人の入学は可能ですか?

「誰でもウェルカムです。もちろん日本人も。日本政府から補助金を受けるためには2年かかるのですが、できるだけ早く各種学校としての認可を得て、きちんとした体制の学校にしていきたいですね」


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