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国際結婚と居住の地、望郷

leader from from
中澤理恵 カナダ
day
2005-01-07
 

  Canadian SocialTrendの調査によると、2001年の時点でカナダにおける「異人種間婚率」は全体の3.2%。その内、日本人以外の人種と結婚をする日本人の率は、他の人種を抜いて1位であった。つまり、 パートナーの祖国、カナダで結婚生活を始める日本人 や異人種のパートナーとカナダで暮らす日本人の割合が、非常に多いということである。

 彼らは、祖国を離れ、言語を習得し、異国での生活を始める。そんな「国際結婚」は、「海外旅行の延長」のようになるのだろうか。非現実的で、華やかなものなのだろうか。

 私の友人・知人の中には、日本人ではないものの、「国際結婚」経験者が何人かいる。

 ここでは、彼らの望郷感あふれる話を紹介する。

***



 「エストニアに帰りたい。」
というのは、エストニア出身の友人がよくつぶやいていた言葉。

 彼女は今から3年前に、カナダ人の夫と国際結婚をした。彼とは、アメリカへの旅行中に出会ったという。それまでエストニアでベテランの経理として銀行で 10年以上、一般企業で3年以上の経歴を持ち、不動産まで所有していた彼女だったが、結婚を機に全てを捨て、カナダに移り住んだ。

 当時、夫には何の心配もなかった。「君は高い教育を受け、そして素晴しいキャリアも持っている。だから、カナダに移ってもきっといい仕事が見つかるよ。きっといい暮らしができるよ。」

 しかし、実際、仕事は見つからなかった。英語に不十分な点があること、経理はカナダで学ばないと意味がないこと、そしてそもそもカナダでの職歴がないということで、3年の間、まともな仕事にありつけなかった。その間、彼女にできた友人は、同じ移民の人達だけだった。

 「カナダをもっと知るために、私はカナダ人の友達が必要だと思ったの。だから、私は色んな人をお茶に誘ったし、ボランティアもしたし、学校にも通った。でも、カナダ人の友達はできなかった。皆、その場限りだったの。」

 そして彼女が思い出すのは、エストニアでの平凡で幸せな日々だった。「私の国では、皆が向上心を持ち、相手を思いやる余裕があった。なのに、カナダに来て、私はいつもがっかりしている。この国にはそんなところがかけらもないのよ。私は単に、普通の暮らしがしたいのに、それも満足にできないの。」

 そんな話をしてしばらくして、彼女から電話があった。エストニアから連れてきた彼女の犬が、急死してしまったと言う。彼女はこの犬を、彼女のルーツの理解者として(彼はエストニア語を理解した)、親友として、それはそれは大事にしていた。彼女は激しく泣き崩れて、もうエストニアに帰る準備をしていると言った。そして、いつの間にか彼女とは、音信不通になってしまった。

 また、カナダで国際結婚をして1年になるウクライナ出身の友人は、コンピューターサイエンスの学士を持つエンジニアだったが、カナダではベルトコンベアー工場で日夜働いていた。彼女もまた、英語力の問題を抱えていた。

 彼女はいくらかのお金がたまった頃、「このままだと自分のプライドがボロボロになるかし、カナダのことも嫌いになるから。」と言って、夫を連れてウクライナへ1ヶ月帰った。「ウクライナの人々とは、尊敬を持って接し合えるのよ。」とよく言っていた。

 一方で、仕事や言語に問題のないメキシコ出身の友人は、カナダ人の夫と結婚して現在結婚4年目。夫は石油関係の企業に勤め、経済的にも、社会的にも揺らぎのない2人。しかし、彼女から「メキシコを想う気持ち」がなくなることはない。

  1年前、カナダの市民権を獲った後も、彼女は自分自身をメキシコ人として位置づけ、メキシコの話をよくした。今年も、彼女と夫は1ヶ月ほどメキシコに帰る。彼女自身は、「本当はメキシコに"一生"住みたいの。」と言っている。夫も、そんなさびしそうな彼女を見て、メキシコに移住することを考え始めているようだ。

 最後は、カナダの旧宗主国で、共通点を多く持つイギリスから移住した知人のケース。彼女は、カナダ人の夫と結婚して5年目、娘が3人。結婚前に2人は、イギリスで3年間同棲していた。カナダに移住後、彼女はこちらで仕事を持ち、夫も安定した職業に就き、大きな一軒家を買った。

 イギリス特有のアクセントで冗談を言っては、人を笑わせるような人だった。そして、2番目の娘がようやく小学校に入ろうというその頃。彼らは突然、スペインに越してしまった。どちらか一方の国に住むというのが結果としてうまくいかなかったから、(第三国の)スペインに移住することにした、というのが理由だった。

 万事うまくいっている様に見えたから、皆が驚いた。しかし、スペインへの移住は、太陽の照る国に憧れるイギリス人らしい発想だ。そしてスペインは、彼女の故郷イギリスから「3時間の距離」でもある。

***



 慣れ親しんだ土地、人々、言語、文化。それが、祖国の持つ求心力である。時には、愛を誓った妻や夫以上に、恋しくなることもあるかもしれない。だから国際結婚と居住の地は、いつでも現実的な問題だ。これからカナダで国際結婚組の仲間入りをする私や、また世界のどこかの同じような誰かも、真剣に考えておきたい事柄である。


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