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移住労働者と性産業 -自ら動けない女性へのアウトリーチ-

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香川容子
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2005-04-17
 

[NGOの力]

 一方、10年以上も前から人身売買の被害者を受け入れてきた国内のシェルターには、経験がある。外国人の人権問題を専門とするスタッフやボランティアスタッフ、語学スタッフと共に彼女達の相談にのり、可能な範囲で自立を支援してきた。個別のケースにおいて資料・データもある。

 これは、警視庁や厚生省が全く耳を傾けてこなかったことでありながら、人権擁護という観点で見れば国際的にも認められる活動であり、海外のメディアでも度々取り上げられている。

 ただ、残念なことにせっかく有益なノウハウを持ちながら、これを十分に活かしてこなかったように思う。というのも、日本のNGOは受身だったのである。シェルターが大使館から連絡を受けて、初めて保護するという形をとっている。

 他に連携できる専門の公的機関も無い上、人材不足といった理由から、警視庁などに度々協力の要請を行ってきたが、彼らの意識もそう簡単には変わらず、結果的に、シェルターへのアクセス手段を知る由もない、大使館へ逃げる自由のない被害者を救出できないままになっている。

[救出班が必要]

  米・仏に限って言えば、このようなNGOの力をフルに活かした試みがすでに行われており、アウトリーチ活動はもはや欠かすことのできないものとなっている。

  例えば、フランスのNGOムーブマン・デュ・二は、週二回街へ出かけ、売春者(その大多数が外国籍)に声をかける活動をしている。通訳を同伴し、身の回りのこと、特に心・体・安全面について問題がないかを聞いて回る。必要に応じて、シェルターの連絡先の書かれた小さなカードを手渡すという。彼女達が時機を得て逃げてこられるようにするためだ。

 ただ、気がかりな点もある。売春者の周りには通常、監視役がいて、マフィアと絡んでいることも多い。彼らに対する恐怖心は無いのか、ストラスブール支部長、コロク氏に話を聞いた。

 「ブローカーと遭遇したことはあっても、危害を加えられたことはありません。むしろ危険なのは売春者のほうで、我々と接触したことによって暴力や嫌がらせを受けていないかが心配。」と言う。

 売春者との対話中にブローカーに遭遇した時は、「私達は彼女の友達だけど、どちらさまです?」と聞いてしまったこともあるという。怖気づくことなく、強い信念を持ってやる姿はたくましく、そして頼もしくもある。

 やはり、日本でも彼女達を見放さないため、何らかの形でこちらからアクセスする必要があるだろう。外国人女性の受け入れシェルター「女性の家サーラー」のM氏(仮名)は、被害者に手を差しのべていく救出班の必要性を以前から主張してきた。

 海外の事例を見ても、風俗店などで働く外国籍女性にNGOがアクセスしていくことは、思いのほかメリットがあるからだ。被害者をサポートし、救出できる可能性が高まるばかりか、被害者と認定されずとも様々な問題を抱える外国籍セックスワーカーを勇気付けることになる。これまで闇の中にあった彼女たちの問題に光をあて、ひいては人身取引のブローカーに圧力をかけ、人身売買を抑止する可能性さえ秘めている。

[変化を求めて]

  2004年6月以降、徐々にではあるが警視庁もこれまでのNGOの主張に関心をよせ、日本政府も人身売買を禁止する法律の制定に向けて前向きな検討を始めている。これから、できる限り彼女達に寄り添い、これまで運良く逃げてこられた被害者だけでなく、現在進行形の被害者やセックスワーカーの声にも耳を傾けていくべきだろう。

 また、より多くの人の注意を喚起し、これまでのNGOで深刻だった協力者不足を解消する必要もある。法律制定の重要な局面を迎える中、どれだけ多くの市民がこの問題に興味を示してくれるかで命運が分かれるといっても過言ではない。今、大きな変化を作っていくためにも、私はNGOに関わる人間として、一人でも多くの協力者をと、切望してやまない。(了)


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